【セックス・エデュケーション】シーズン1解説。性に対して奥手な高校生、オーティス・ミルバーンは周りの学生が高校生活を謳歌する中で、性の経験がないことをどこかコンプレックスに感じていました。しかし彼の母は有名なセックス・セラピスト。オーティスは性にまつわる書籍やモチーフで溢れていた環境で日々を送っています。ひょんなことをきっかけに学校の問題児メイヴに誘われ、オーティスは経験がなくとも「知識」を武器に、高校で「セックス・クリニック」を開くことを決意するのでした。
「コンプレックスと向き合う」今までになかった学園ラブコメディ
主人公のオーティス(エイサ・バターフィールド)の悩みは自分に性経験がないこと。
しかし、彼が暮らす自宅には、そこかしこに性にまつわるオブジェや書籍が積み上げられています。
それもそのはず、オーティスの母であるジーンは性に悩む人々の相談にのる有名なセックスセラピストだったのです。
仕事には時にテレビでの性教育も含まれており、オーティスの学校でもその映像が流れました。
ビデオを流した犯人であるアダムは、オーティスや親友のエリックへ常日頃意地悪を繰り返すクラスメイトですが、彼も彼なりに自分の性に対して悩みを抱えていたのです。
アダムの誰にも相談できない性への悩みを、オーティスは自身の持つ性の知識で解決します。
それに目をつけたのは、学校で一際目立つ存在であるメイヴ(エマ・マッキー)でした。
メイヴはオーティスの性の知識を活かして、高校生に向けた「セックスセラピー」のビジネスを共同でおこなうことをオーティスに提案します。
迷いを抱きながらも、提案を飲み込んだオーティスはさっそくメイヴと共にセラピストの仕事を始めました。
しかし、最初はなかなか思うようにもいかず、まずは「性の問題が多発する」パーティ会場で無料相談から顧客を集めることを始めます。
パーティで知り合ったカップル評価を得たオーティスのセラピーは瞬く間にクチコミで広がり、高校の中で人気を集めました。
レズビアンのカップルや自分自身の身体との向き合い方など、さまざまな性と心にまつわる問題を解決していくうちに、オーティスは自分の中に眠るメイヴへの気持ちに気づきます。
そして、その想いが自身の性を目覚めさせたことを自覚せざるを得ませんでした。
一方メイヴは、学校の人気者ジャクソン(ケダル・ウィリアムズ・スターリング)と身体の関係を持ちつつも、彼からのアプローチをかわし続けます。
ジャクソンから恋愛相談を受けたオーティスは自分の気持ちを打ち明けられないまま、ジャクソンに的外れなアドバイスを続けてしまいました。
そんな中でもジャクソンはメイヴの心を動かすことに成功し、オーティスの気持ちもつゆ知らずメイヴはジャクソンとカップルになります。
ジャクソンは家庭環境の違いから、メイヴがジャクソンの両親や周囲の環境と距離を取りたがっていることに気がついていました。
そんな中で、オーティスとメイヴのセックスセラピーはまたもや成功を収めます。
しかし、オーティスはメイヴのセラピーを優先させたため、エリック(チュティ・ガトヮ)との約束を破ってしまったのです。
恋心だけでなく、エリックとの友情すら危うくなってしまうオーティス。
学校ではダンスパーティーが開催され、メイヴはジャクソンと、オーティスはオーラを誘って参加をします。
オーラといい雰囲気になるオーティスでしたが、メイヴとオーラを比較したことでオーラを怒らせてしまいます。
オーティスの言動は、オーラに対してとても失礼なものであることにオーティスは気づくことができませんでした。
また、家族との関係が悪くなったジャクソンはメイヴの家に泊まりにきますが、家庭環境に対する価値観のズレからメイヴに振られてしまいます。
一方で自分の非を認め、オーラと仲直りしたオーティスはオーラとはじめてのキスをするのでした。
キャスト
エイサ・バターフィールド
オーティス・ミルバーン役を演じるのは、1997年生まれの俳優で、マーク・ハーマン監督の【縞模様のパジャマの少年】(2008)で数百人の候補者の中から主演に抜擢されたエイサ・バターフィールド。
2011年のマーティン・スコセッシの監督映画【ヒューゴの不思議な発明】でも主演を務めています。
エリック・エフィング
オーティスの親友、エリックを演じるのは1992年生まれのチュティ・ガトヮです。
ルワンダ生まれ、スコットランド育ちで『Bob Servant』『Stonemouth』などに出演しています。
メイブ・ワイリー
学校の問題児、メイヴ役を演じるのはエマ・マッキーです。
初のテレビデビューは2016年【Badger Lane】という作品になりますが、彼女は役者の仕事以外にモデルとしても活動もしています。
「AIDA Shoreditch」など、多数のブランドでメインのモデルを担当してきましたが【セックス・エデュケーション】が彼女の女優としての顔を世界に広めました。
【セックス・エデュケーション】注目のポイント
自身と向き合うということ
オーティスを含む、作中に登場する、性の悩みを抱える高校生たち。
セクシャリティのことから、初めての行為への悩み、パートナーの気になるところまで、本当は知りたいことがたくさん年頃。
それでも、不安な気持ちや深刻さは表には出さず、つい茶化してしまったり、親友にすら隠してしまったりするのは「性に関する話題はタブー」だからです。
誰にも聞くことができず、わからないままアダルトビデオや噂で身につけた間違った知識に翻弄されて、大事件が起こる回もあります。
そう、これはオーティスと高校生たちのコメディでもあり、そのままそっくり”わたしたちの物語”でもあるのです。
オーティスの言葉は、いつだってある意味現実的で問題点を客観的に的確に捉えます。
みんなはそんなオーティスに感謝を告げて、性に前向きになっていきますが、オーティス自身も自らの性の問題に対面しています。
アドバイスする人とされる人の絶対的な構図ではなく、みんなそれぞれに個々の身体があり、形も色も異なる【自分】に少なからず悩まされていることを、【セックス・エデュケーション】は教えてくれるのです。
家族との関係もひとつのテーマ
よく考えれば当たり前のことなのですが、親友や親、ましてパートナーには特に、この手の話をすることをなんとなく避けてしまうのは皆さんにも覚えがあることでしょう。
この物語にはLGBTQの内容が含まれており、あらゆる視点から内容は違えど誰もが性に関する悩みを抱えている様子が伺えます。
アダムとの関係に悩むエリックはその最も顕著な例であり、エリックはその持ち前の明るさから学校では自分を表現できていても、家の中、とくに自分の父の前では「女の子としての気持ちを持った自分」をうまく表現でききません。
性に関する問題だけではなく、思春期特有の家族との問題についても繰り返し考えさせられるエピソード内容となっているところも魅力です。
ジャクソンのような学校の人気者にでも悩みがありました。
【セックス・エデュケーション】を通してみんな同じ悩みある人間として、わたしたちは弱く、誰かを求め支えにしていることに気付かされるのです。
性被害についての話
学園ラブコメディの要素が強い【セックス・エデュケーション】ではありますが、性被害にあった生徒の感情のリアルさにも驚かされます。
痴漢のトラウマと闘うメイヴの友人エイミー。
恐怖が後日襲ってくると語る彼女の嘆きには、女性視聴者で共感した方も多いシーンだったかも知れません。
「毎日乗るただのバス」が「何かあるかもしれないバス」になってしまうかもしれないのは、受けた被害を自分以上に、人に心配された時かもしれません。
前歯がチャーミングで、ちょっとおバカで誰よりも友達思いなエイミーは、個性豊かな面々の中でも親近感の湧きやすいキャラクターでした。
みんな同じ人間で、涼しい顔をして格好つけているだけ。
傷ついた出来事に対して「なんともないと思い込みたい」ときこそ、きちんと向き合って根本を解決する強さが必要なことをエイミーは教えてくれました。
【セックス・エデュケーション】が教えてくれること
今までの学園ものとは一味違う、過激なのにどこかあったかい気持ちになれる「セックス・エデュケーション」。
それはこの作品が、貴方はそのまま生まれたままの姿で素敵だというメッセージを伝えてくれるからです。
続編の発表もあり、これからも盛り上がりを見せるオーティスたちの学園生活から、まだまだ目が離せません。