【ウェーコ事件:アメリカに訪れた終末の日】解説。アメリカで最も悪名高い大虐殺事件

ウェーコ事件:アメリカに訪れた終末の日,解説 実話・実在の人物を基にした
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【ウェーコ事件:アメリカに訪れた終末の日】ネタバレ解説。本作は、アメリカで最も悪名高い大虐殺事件”ウェーコ事件”に迫る、全3話のドキュメンタリードラマです。プロテスタント系のセクトであるブランチ・ダビディアンは、FBIと51日間に渡る包囲戦を繰り広げます。

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「ウェーコ事件:アメリカに訪れた終末の日」ウェーコ事件とは

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1993年2月28日、アメリカ・テキサス州ウェーコ

ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)は、プロテスタント系のセクトであるブランチ・ダビディアンに対して強制捜査を行おうとしていました。

ブランチ・ダビディアンとは、アメリカを拠点とする新興宗教セブンスデー・アドベンチャーの分派であるダビデ派セブンスデー・アドベンチスト教会から分派した、プロテスタント系のセクトのこと。

予めブランチ・ダビディアン宛の荷物から違法な銃器が見つかったとの通報を受けていたATFは、数ヶ月前からブランチ・ダビディアンの監視を行っており、ついに令状を取得して強制捜査へと乗り出します。

当初の予定では秘密裏に行われる予定だった強制捜査ですが、事前に強制捜査のことを聞かされていた地元記者が道を尋ねた相手がブランチ・ダビディアンの指導者デビット・コレシュの義兄だったため、強制捜査は公になってしまいます。

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程なくしてATFとブランチ・ダビディアンによる銃撃戦が始まり、互いに死傷者を出しながらの銃撃戦は2時間にも及びました。最終的にはATF側が弾薬を使い果たしてしまったことから停戦を交渉し、ATFは引き揚げを余儀なくされます。

この強制捜査で、ATF側は死亡者4名と負傷者16名、ブランチ・ダビディアン側は死亡者5名という犠牲を出しました。

ATF撤退後

ATF撤退後からはFBIが指揮を執り、人質救出チームを投入します。しかし、FBIの交渉班と人質救出チームの指揮官が上手く連携を取れなかったことから状況解決は困難を極め、事態は悪化の一途をたどります。

FBIは交渉班を通して人質解放を呼びかけるも成果は得られず、ついには貯水タンクの破壊や安眠妨害などの武力行使に出ました。こうしたFBIの武力行使は指導者コレシュから信者たちに退去を命じさせることには成功しましたが、実際に退去したのはたった11名で、子供を含むまだ多くの信者がコレシュの元に残っていました。

1993年4月19日、ブランチ・ダビディアンの教団施設

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すでにブランチ・ダビディアンとFBIの攻防は51日間にも渡っており、このままでは埒が開かないため、司法長官はFBIによる急襲制圧を承認します。FBIの人質救出チームは教団施設の壁に穴を開けて催涙ガスを送り込み、信者を傷つけることなく追い出そうと試みますが、6時間経っても誰1人として外に出てくることはありませんでした。

その後、教団施設の3カ所でほぼ同時刻に火災が発生します。それでも外に出てきたのはわずか9名であり、子供を含む残りのブランチ・ダビディアンの信者は死亡しました。

なお、教団施設内からは頭部に銃弾を受けた指導者コレシュの遺体も発見されており、FBIは側近がコレシュを射殺して自殺したとの見解を示しています。ブランチ・ダビディアンの死亡者は76名に上り、最初のAFTとの銃撃戦での死亡者も合わせると、死亡者は82名となりました。

検視官によると、14歳未満の子供5名を含む20名が銃で撃たれ、3歳の子供は胸を刺されていましたが、これらの死は逃げ道のない火災に閉じ込められたブランチ・ダビディアンによる慈悲の殺害であるとのことでした。

この火災については、ブランチ・ダビディアンとアメリカ政府での主張が異なっており、ブランチ・ダビディアンにより故意に起こされたものだとする政府に対し、ブランチ・ダビディアンの生存者はFBIの制圧によって偶発的か故意に始まったとしています。

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「ウェーコ事件:アメリカに訪れた終末の日」ウェーコ事件が長引いたのはFBIの連携ミス

©︎Netflix

ウェーコ事件が51日間にも渡ったのは、ATFから事件を引き継いだFBIの連携ミスによるものでした。FBIには交渉班人質救出チームがあり、慎重に交渉して事件解決を目指す交渉班に対し、人質救出チームは大胆な武力行使で素早く事件を解決したいと考えていました。

互いに真逆の発想はすれ違いを生み、やがて交渉班が指導者のコレシュと築いた信頼さえも失うことになってしまいます。当初の交渉班は着実にコレシュとの信頼関係を築いており、実際に複数の人質を解放させることに成功していました。

しかし、日が経つにつれて焦りの色を見せる人質救出チームは、交渉班に無断で施設内の駐車場まで前線を上げたり、信者に対して安眠妨害を行うなど独自の判断で武力行使に出たのです。こうした無断の武力行使はコレシュと交渉班の反感を買い、ついには良好だったコレシュと交渉班の関係さえも壊してしまいました。

以降、コレシュが交渉班の言うことを聞くことはなく、平和的解決は難しいと判断したFBIは司法長官に急襲制圧の要請をしました。

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「ウェーコ事件:アメリカに訪れた終末の日」今も心に傷を残す信者、コレシュは本当に悪だったのか

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本作で最も印象的だったのは、生き残ったブランチ・ダビディアンの信者の肩書きが”元信者”ではなく、”信者”のままだったこと。てっきりウェーコ事件で本部と指導者を失ったブランチ・ダビディアンは消滅したのかと思っていましたが、現在は”The Branch, The Lord Our Righteousness”と改称して存続しているようです。

彼らは30年経っても未だブランチ・ダビディアンの信者であり、中にはあの日最後まで神に仕えなかったことを悔やむ者すらいました。ここまで人の心を動かす指導者デビッド・コレシュとは一体どんな人物だったのか、本当にただの悪人だったのかについては疑問が残ります。

違法な銃器を製造したり未成年と関係を持ったりというコレシュの行動は、確かに犯罪行為には当たりますが、もし本当にコレシュがただの悪人だったのならもっと早い段階で内部告発が起きてもおかしくないでしょう。

もちろん信者には言えない事情や背景がある可能性も考えられるうえ、何より当事者であるコレシュが亡き今となっては真相を知る由もないのが残念です。

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本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況は[Netflix] にてご確認ください。