「馭鮫記(ぎょこうき)後編」3話・4話あらすじネタバレと感想。御霊師の紀雲禾と鮫族王子の長意は互いに想いあっているにもかかわらず、依然として意地を張り続けており、見かねた山猫族王子の離殊が助け舟を出します。
一方、仙師府では順徳仙姫の汝菱を目覚めさせるべく、万花谷の谷主の林旲青が汝菱に仙師の書斎にある密室の存在を明かしました。
第3話:情のもつれ
北淵。山猫族王子の離殊は、烙印までつけて御霊師の紀雲禾を監禁する鮫族王子の長意に苦言を呈します。
離殊は長意がまだ紀雲禾を想っていることを見抜いており、好きな人を喜ばすことが愛情だとして監禁は止めるよう促しました。長意は決して紀雲禾への想いを認めはしなかったものの、その表情からは複雑な心境が窺えます。
その後、長意は腹心の空明と紀雲禾の仙侍の洛綿桑の元へと戻ります。そこでも洛綿桑から監禁を止めるよう迫られた長意は、復讐よりは監禁の方がましだろうとの見解を示しました。
長意は空明から紀雲禾をまだ諦め切れていないことを指摘されると、執念でも未練でも必ず生かし続けてやると宣言しました。その一方、長意と離殊の会話を盗み聞きしていた御霊師の雪三月は、戻ってきた離殊にこれまで秘めてきた胸の内を明かします。
それは離殊への想いと、過去は水に流してやり直したいというものでした。離殊は雪三月を抱き寄せ、彼女の想いを受け入れました。
凌霜台。狐族の王女の卿瑶は、長意に新しい北淵の長になってほしいと打診します。
長意は少し悩んだ後、北淵の長となることを引き受けました。しかし長意が即答しなかった理由が紀雲禾であることは空明に見抜かれており、空明は早く決着をつけるよう長意に迫ります。
北淵の長・尊主就任の式典の日。長意は尊主の衣を身に纏い、颯爽と皆の前に現れます。
皆が新たな尊主となった長意に挨拶をする中、長意の右耳の烙印が金色に光りました。この烙印は長意と紀雲禾の五感を繋いでいるため、長意の烙印が光るのは紀雲禾の体の異変を意味していました。
長意は式典を抜け出して一目散に紀雲禾の元へと向かいます。実は、紀雲禾は生殺しの状態に限界を感じ、練炭を使って自害を試みていたのです。
紀雲禾は最後に長意の美しい尾を見られたらと言い残して、眠りにつきます。夢の中で紀雲禾は、順徳仙姫の汝菱に酷似した女性と出会いました。
その女性は紀雲禾にまだ死ねないと告げ、消え去ってしまいます。次の瞬間、雲苑の窓がひとりでに開き、窓から入って来た風により練炭の火は消えました。
仙師府。汝菱の顔の治療はまだ続いており、世話役が2人がかりで押さえ込まなければならないほど凄まじい痛みに汝菱は襲われていました。
そこへ、万花谷の谷主の林旲青が自作の鎮痛薬を持って現れます。林旲青の鎮痛薬はすぐに効き、痛みが治まった汝菱は林旲青に目的を尋ねました。
すると、林旲青は自分でも作れるような鎮痛薬を与えないのは仙師の寧清が汝菱を大事にしていないからであり、寧清の懸念は汝菱の顔だけだと指摘します。そして、真相を知りたいなら寧清の書斎にある密室に行くよう付け加えました。
これには汝菱を武器にしたいという林旲青の思惑があり、林旲青は汝菱を寧清と対する際の武器にしようと目論んでいました。汝菱が素直に林旲青の言葉を聞き入れるかを案ずる仙侍の思語に対しては、あそこで殺されなかったのは言葉が響いた証しだと断言します。
第4話:ざわつく心
北淵、湖心島の雲苑。紀雲禾の暮らす雲苑に長意が越してきます。
これは長意が自ら決めたことで、これからは議事や巡視以外の尊主の務めは全てここ雲苑で行うとのことでした。
紀雲禾が四六時中見張られて自害もできないと肩を落とす一方、長意は体を癒す効能のある宝器を部屋中に置くなど紀雲禾に対して最大限の配慮をします。
さらに、長意は空明に紀雲禾の治療を行うよう頼み込んでおり、今後は空明が紀雲禾の治療を行うことになりました。
とはいえ、空明の医学の知識を以ってしても体内で2つの霊力が激しく反発する紀雲禾の体を治すことはできず、苦痛を和らげるのが精一杯でした。
空明から紀雲禾は助からないと聞かされた長意は少し苛立った様子で、紀雲禾の命運は自分が変えると宣言します。あまりにも紀雲禾を優先する長意に対し、空明は尊主ならば大義を優先すべきだと苦言を呈しました。
すると、長意は紀雲禾が従棘所で己の身を危険に晒して仙友を逃したことを例に挙げ、紀雲禾は悪人ではないと説きます。
また、今の紀雲禾の苦しみはかつて空明も関わっていた寒霜と深い関わりがあるのだとして、改めて紀雲禾の治療を行うよう空明に訴えかけました。
空明は渋々ながらも長意の思いを受け、紀雲禾の治療を引き受けることにします。最初こそ紀雲禾に対して強く当たっていた空明も、紀雲禾のこれまでの行動は全て長意を守るためだったことを確認してからは少しだけ柔和になりました。
その後、紀雲禾は長意が雲苑に来てから一睡もしていないことに気がつきます。長意の身を案じた紀雲禾は長意を休ませるべく、以前のように接したら言うことを聞いてくれないかと打診しました。
頑固な長意は紀雲禾の提案を跳ね除けますが、紀雲禾は試せばわかると長意の腕を掴みます。長意は紀雲禾の行動に少し驚きながらも提案を受け入れ、紀雲禾に口づけをしました。
仙師府。汝菱は林旲青の言葉が引っかかっており、真実を確かめるために仙師の寧清の書斎にある密室を訪れます。
壁に掛けられた自分に酷似する絵姿を目の当たりにした汝菱は、自分は身代わりに過ぎないことを思い知らされました。そこへ現れた寧清に絵姿のことを尋ねるも適当にはぐらかされ、汝菱が真相を知ることはできませんでした。
その後、汝菱の元に林旲青がやって来ます。林旲青からこのまま引き下がるのかと煽られた汝菱は怒りを露わにし、寧清との関係にヒビが入ったのは林旲青のせいだとして刀を突きつけました。