「馭鮫記(ぎょこうき)後編」11話・12話あらすじネタバレと感想。
順徳仙姫の汝菱は強大な力を求め、仙師が密室に隠す青黒い煙のようなものと契約を交わすと、人間界に逃げた御霊師から霊力を奪うよう朱凌に命じます。
これによって解毒薬の薬材を集めていた万花谷の東濂長老が捕まり、谷主の林旲青は阿紀を1人で外に出すことにしました。しかし谷を出た阿紀は仙師府の姫寧を助けたことから北淵へと連行されてしまい……。
第11話:阿紀としての人生
仙師府。順徳仙姫の汝菱は御霊師を導くという仙師府の本質に背き、人間界に逃げた御霊師たちを捕えるよう腹心の朱凌に命じます。
実は、これには仙師の寧清が書斎の密室に隠している青黒い煙のようなものが関係していました。寧清の腰の重さに痺れを切らしたそれは、力を欲する汝菱を煽って取り憑き、寧清から汝菱へと鞍替えしていたのです。
汝菱は寧清に復讐を果たすための強大な力を求めて青黒い煙を受け入れ、その交換条件として他人の霊力を集める必要がありました。そんな汝菱の目論みに気づいた兄弟子の姫成羽は寧清に報告し、師匠である寧清から汝菱を止めるよう頼み込みます。
しかし寧清は全てを承知したうえで、汝菱の好きにさせればいいと仙師らしからぬ発言をしました。
寧清の発言に目を丸くする姬成羽でしたが、寧清には命を救われた恩があるため、湧き出た不信感を押し込めます。とはいえ、正義感の強い姬成羽に見過ごせるわけもなく、姬成羽は密かにかつての兄弟子である空明に助けを求めました。
その頃、御霊師の雪三月と仙侍の離殊は、天君の汝釣たちと共に寧清が不思議な力を得たとされる無名山を捜していました。ところが、1000年も経つと辺りの地形も変化しており、広物集の絵と一致する山を捜すのは困難を極めます。そこで汝釣は天庭に戻って古書を調べることにし、雪三月と離殊が人間界を調べることになりました。
北淵。姬成羽からの手紙を受け取った空明は汝菱から御霊師たちを救い、北淵で保護することを決意します。
早速、空明は鮫族王子で尊主の長意を訪ね、汝菱が人間界の御霊師を狙っていることを報告します。さらに、汝菱に狙われる御霊師たちを保護して、それを世に示せば仙師府を見限った御霊師が集まり、北淵の戦力が増すとの相乗効果についても説明しました。長意は二つ返事で承諾し、御霊師の保護は空明に託されます。
万花谷。完全な九尾狐となった紀雲禾/阿紀は、谷主の林旲青と仙侍の思語に守られ、すくすくと育っていました。
紀雲禾は林旲青から半生分の霊力を分け与えられ、人間の少女の姿となった。なお、今度こそは自由に生きてほしいという林旲青たっての願いで、紀雲禾は過去の記憶を消され阿紀という新たな名前を授けられた
阿紀はかつての紀雲禾の家で暮らしており、家とその周辺には結界が張られているゆえ、阿紀の存在は林旲青と思語しか知りません。こうして厳重に守られながら暮らす阿紀でしたが、思語は凄まじい勢いで成長する阿紀が紀雲禾のように結界を出たがるのではと気を揉んでいました。
そんな思語に対して林旲青は、阿紀の行動を制限する気はないとの考えを明らかにします。
第12話:阿紀の冒険
万花谷。谷主の林旲青は、阿紀が夢を通じて紀雲禾の記憶を見ていると知り、顔を曇らせます。
しかもその夢は紀雲禾の記憶そのもので、紀雲禾を見送る長意の一部始終でした。阿紀の説明から長意のことだと察した林旲青は、これ以上の詮索をさせぬよう阿紀を好物で釣り、ただの夢だから気にするなと宥めます。
そして、外に出たいなら振り返らずに進むことが大事だと説き、阿紀が外見を変える幻形術を習得したら外に出すことを改めて約束しました。その間に林旲青は寒霜の解毒薬を完成させ、それが出来たら阿紀の遊歴に付き添うつもりでした。
解毒薬は東濂長老が手に入れた薬材を調合すれば完成というところまできており、林旲青は東濂長老の帰りを待ちます。東濂長老は今夜にも到着するはずが、その道中で汝菱の腹心である朱凌に襲われてしまいました。
朱凌に捕らわれた東濂長老は、仙師府に連行される前にその旨を記した知らせを林旲青に送りました。東濂長老からの知らせを受けた林旲青は救出を決意し、阿紀を1人で外に出すことにします。
これは林旲青が万花谷を不在にした際に阿紀が仙師府に感づかれぬようにするためでもあり、林旲青は仙侍の思語に同行を命じました。しかし林旲青の身を案じる思語は、この命には従えないと初めて反発します。
翌朝。ついに阿紀は1人で万花谷の外へと旅立ちます。見送りにきた林旲青は用が終わったら必ず行くと約束し、阿紀には3つの約束を忘れぬよう念を押しました。
林旲青が阿紀に約束させた3つの約束は、鹿台山には行かない、北淵には行かない、顔を隠す
谷を出た阿紀は意気揚々と歩みを進め、人間界の町へと辿り着きました。偶然にもその町には御霊師の保護にきた空明と瞿暁星、紀雲禾の仙侍の洛綿桑がいました。
そこで阿紀は御霊師に追われる仙師府の姫寧と遭遇し、親切心から姫寧を救いました。ところが、この行動により阿紀は姫寧の仲間だと勘違いされ、姫寧と共に北淵に連行されてしまいます。
北淵。九尾狐族の将軍の奇鋒は、従妹で王女の卿瑶が鮫族王子の長意の言いなりになっていることに苛立っていました。
酒を飲みながら不満を漏らす奇鋒の元へ、北淵に帰順した符兄弟の弟の符恒が現れます。卿瑶から狐族の駐屯地を分け与えられて図に乗る符恒は、駐屯地の拡大と卿瑶も自分に差し出すよう奇鋒を煽りました。
これには奇鋒も我慢の限界を迎え、思わず符恒を殺してしまいました。もしこれが長意に知られたら奇鋒は死刑を免れぬゆえ、奇鋒は符兄弟と敵対する盧瑾炎を犯人に仕立て上げます。
すぐにこの件は長意の耳にも届き、長意は盧瑾炎と符兄弟の兄の符超に対して死刑を言い渡しました。とはいえ長意は奇鋒の話を信じたわけではないようで、従者の羅索に奇鋒の監視を命じます。