乾国の督査衛の捜査官・蘇玖児は幼い頃にかかった奇病のため、体が冷えて動けなくなってしまう特異体質の持ち主。寒冷の地である祺国からやってきた寒狰は熱い心と体を持った少しぶっきらぼうな皇子様。
それぞれ別々の理由で三本傷の祺人を追う二人は、数々の祺人が絡んだ事件を追ううち次第に心を通わせていきます。
【想いの温度差~九霄寒夜暖】全話一覧
1話:祺人の童謡
彼女の名前は蘇玖儿。乾国の九霄城にある督査衛の巡視です。生まれつき体が弱く幼い頃に五感が衰えてしまう奇病に侵されており、時々突然体が冷たくなって眩暈を起こします。
そのため、仕事と言えばみんなのためにスイカを切ったりお茶を入れたりのみそっかす。局長からは役立たずと睨まれており、唯一の幸せな時間は眠る時だけ。悩みを忘れるための最善の方法です。
大好きな名づけの父・胡八道はやはり督査衛の巡視で、万年ヒラでいつも二日酔い。後輩で年下の局長にバカにされ、虐められる毎日です。今日も二日酔いでいい気分になって、教わった祺人の童謡を歌っています。
その童謡を聞いた蘇玖儿はひらめきます!今九霄城を騒がせている四人の官吏の失踪事件。その様子が童謡にそっくりの状況なのです。監営司の李大人は腕が切断された状態でどぶに捨てられていました。
運糧司の劉大人は城外の皇太后廟で左足を失った状態で見つかりました。どちらも歌詞の通りです。そうすると、今行方不明の残りの二人もその歌詞に従えば、”花柳洲”と”鬼門関”で見つかるはずです。
もう一度歌を歌って貰おうと思った蘇玖儿。ですが胡八道は酔っぱらって居眠りしてしまいました。起こそうとしたところで厳支局長がやってきました。そして飲酒と居眠りの現行犯で叱られてしまいます。
蘇玖儿はとりなすために、胡八道が二日酔いしているのは管理失踪事件を調べる手掛かりを得るためだったと主張します。そして、さっき歌った祺人の童謡をもう一度歌わせようとします。
折角の大発見だと思ったのに、既に容疑者を捕らえたという岳大仁。事件のあらましを全員でおさらいして、さて捕らえた容疑者を誰が尋問する?という段になります。
捕らえられたのは頬に三本傷のある祺人でした。死体遺棄現場の近くで何人もの目撃者がいて、事件の詳細を盗み聞きしているような様子をしていたという噂です。
今朝ほど市場で目撃情報があったので部下を集めて捕えて来たといいます。しかし、乾国の乾人に比べ、身体も大きくて力も強く、獰猛だという噂の祺人を取り調べる勇気がある人は誰もいませんでした。
白羽の矢が立ったのはいつも役立たずと言われるこの二人。仕方なく、胡八道と蘇玖儿は取調室に入ります。
祺人の名前は寒狰。二人が入るなり、震える女に尋問させるなんて同情をひくつもりか?とバカにします。体が凍えて仕方がない蘇玖儿は寒いだけだといいますが、夏なのに寒いはずがないと一層バカにする寒狰。
取り調べが始まると、蘇玖儿は寒狰が事件の犯人というよりも、その犯人について督査衛が既に知っている情報を聞き出そうとしているように感じます。盃に水を入れてそっと近付き、飲みますか?と尋ねるふりをして顔にかけ、ごしごしと拭くと頬の三本傷は描いただけで、本物ではないことがわかります。
あなたは犯人じゃない!私たちの情報を知りたくて来ただけだ!得意げに言う蘇玖儿を、突然寒狰は掴み上げました。軽々と片手で頭の上に持ち上げて机に投げ落とす。そして調書を奪おうとします。奪われまいとする二人の乾人対祺人。
2対1でも力の差は歴然としています。半分にちぎれた調書を慌てて蘇玖儿は懐に隠します。流石に女性の胸には手を入れられない寒狰。そして他の督査衛の人々が集まってくる物音に彼は逃げて行きました。
彼は犯人ではないことはわかったけど、では誰が犯人?局長は逃がした胡八道と蘇玖儿に、彼を捕らえて盗まれた調書の半分を戻させるか、もしくは督査衛をクビにすると脅します。
来年は定年退職する予定だった胡八道。順調にいけば年金を毎月の半分貰えたはずだったのに!そして蘇玖儿自身も母親に心配をかけるわけにはいかない。高い薬を使った薬湯を母親は用意してくれているけど暮らしが楽なはずがないと、逃げた祺人を捕まえて調書を取り戻す決意をしました。
一方、寒狰は蘇玖儿が言い当てた通り、この事件の犯人と思われる三本傷の祺人・玄祺少主の穆延を探しに克哈を連れてこっそり乾国に入国したのです。
穆延は今や、祺国の四部族全てから追われる10年前から行方不明になっている逃亡者です。乾人よりも、そして何より祺国の四部族の使い手たちよりも先に、幼馴染の穆延を見つけなければいけません。
二人とも、祺人の童謡を手掛かりに花柳堂という浴場にやってきました。とても風が強い日です。
当然、今回は蘇玖儿も祺人対策を怠りませんでした。寒い地域に住んでいる祺人たちは暑いのがとても苦手で、暑いところでは力が出なくなります。その弱点を使って、寒狰をうまく柱に縛り上げたまでは良いのですが、約束していた胡八道が来てくれません。
この暑い部屋を連れだしたらすぐに寒狰は逃げてしまう。二人とも八方ふさがりのにらみ合いになってしまいました。
そんな時に限って、蘇玖儿は持病の眩暈が起きます。倒れる際に火を倒してしまい、辺りは火事に。寒狰が先に縄を解け!と怒っても彼女は気絶してしまいました。
仕方なく力を振り絞って縄をちぎる寒狰。見殺しには出来ず、仕方なく蘇玖儿を助けることにします。
「なぜこんなに手が冷たいんだろう?」そう驚く寒狰。
「どうしてこんなに手が温かいんだろう」と、うっとりする蘇玖儿。
寒狰が握った手から、蘇玖儿は力が戻ってくるみたいな気がします。
2話:花柳堂の火事
火の勢いは強く、あっという間に花柳堂は火の海に。外を覗くととても高くて飛び降りれる高さではありません。こんなとこから飛び降りたら死んじゃう!と慌てる蘇玖儿を面倒くさそうに寒狰は抱えて窓から飛び降ります。
途中で体を入れ替えて緩衝材となって木の板にたたきつけられた寒狰と、その上に覆いかぶさる形で落ちた蘇玖儿。
ふと手が触れると温かさが流れ込んできて、力が湧きが上がるような気がします。もう少し・・・もう少しだけこのままいさせて欲しいとうっとりする蘇玖儿を、寒狰は「起きないのなら確実に死ぬぞ!」と脅しました。
蘇玖儿は、しぶしぶ起き上がってお礼を言い、二人が職を失わないために、調書を返却しに督査衛に来て貰えないかと相談を持ち掛けます。
寒狰はお忍びで来たので身分が知れると面倒だから嫌だと断ります。負けずに蘇玖儿は、和解がしたいと手を差し出します。
一、 彼女はまた私に触れたいのか
二、 なにかまた企んでいるのか
寒狰の予想は大当たりで、蘇玖儿はわなを仕掛けようとしていました。乾国人は本当に狡猾だと呆れ、怒りながら立ち去る寒狰。
帰り際に蘇玖儿は人が入るくらいの大きな木桶を積んだ荷車を押す男とぶつかりました。「大丈夫です、ごめんなさい」と言ってその場を去った蘇玖儿ですが、督査衛の証拠である腰牌をその場に落としてしまいます。
家に帰った蘇玖儿は昼間の、寒狰に触れた時に感じた温かさは娜なったんだろうと考えていました。親友の阿花がどうしたのかと尋ねます。
「特別な人に会ったんだけど、その人に触れると体が温かくなって、調子もいいんだ」と言うと、阿花は「その人は男の人なんでしょう?」と言い当てます。
「だってそういう風な不思議な力は愛だもの!」そう主張する阿花に呆れて、「もう寝る!」と布団に入った蘇玖儿ですが、やはり寒狰のことが気になって仕方がありません。
どうして彼に触れると温かくて心地よくて、力が戻ってくるような気がするんだろう。
眠れずにいたところに胡八道がやってきます。明日は督査衛に早く行かないように、花柳堂に行ったことは絶対に認めないようにと、念を押しに来たのです。
あの後、花柳堂は火事で全焼し、死体は思った通りその場に捨てられていたそうです。しかも火事が起きたちょうどその頃に、花柳堂の中ではなくすぐ近くの井戸に捨てられていたそうです。
翌日、井戸の辺りを探る寒狰は、死体を遺棄した者が祺人なのか乾人なのかさえわからない匂いが残っていないことに違和感を覚えます。祺人の嗅覚は鋭いのに、それをもってしてもわからないなんていったい何者なのでしょうか。
周囲の聞き込みを終え督査衛で報告会が行われます。蒋大人の死体と捨てられた場所は確かに、祺人の童謡の通りのようです。目撃者によると火事の前に祺人の男と抱き合っていた女性がいたそうですが、それが蘇玖儿と似ていたという証言もあったそうです。
そこへ花柳堂の店主の金氏がやってきました。焼け跡には督査衛の公印が押された鶏林紙があったということで、放火犯が督査衛の人間なのではないかと疑っているとのことです。
署名が残っていた王天運が代わりに疑われてしまい、耐えきれず蘇玖儿はその場にいたのが自分だと名乗り出ます。
百両を弁償しろと言われて困り果てる蘇玖儿に追い打ちをかけるように局長は督査衛から追い出すと言います。蘇玖儿は、もし胡八道と二人でこの事件を解決できれば督査衛は二人の実力を認めて呼び戻さなきゃならないという賭けを切り出します。期限は半月。
犯人について情報を持っているのは、寒狰ただ一人。阿花に頼んで似顔絵を描いて貰います。
いたるところに 検問があって身分証明書の確認が行われています。似顔絵迄出回っていて、寒狰は動きが取りにくくなってしまいました。祺国からもすぐに帰国するようにと追手がやってきます。
祺国では十年前に聖なる火が失われた影響でどんどん寒波が下ってきていて、今大変な状態になりつつありました。唯一の解決策は聖なる炎を見つけることです。
さもなくば、数十年後には祺国は氷の死の大地になってしまいます。祺族が乾国に移住するために乾祺六盟を締結させるほかありません。雪祺王は今すぐ寒狰を連れ戻すよう、叱蘭将軍に頼みます。
一方、乾国では官吏の殺害事件以降、祺人に対する風当たりが強くなってきました。大家の女将もやってきて、証明書が無ければ家を貸せないと言ってきます。身分を隠して九霄城にやって来た寒狰達には当然身分証明書はありません。
克哈は寒狰に正式な証明書を作れるのは督査衛だけだから、乾人の協力を得た方がいいのでは?と提案しますが一蹴されます。それでは氷を買いに行った時に会った祺人の子供が知っているという、書類を偽造してくれる場所に行ってみようといいます。
卡卡というその少年が案内した先は、祺人の闇市場でした。鍛冶屋で偽の証明書を作る二人。そこに官兵が来たという知らせが。蜂の子を散らすように逃げ惑う祺人たち。
ここから出れば安全だと卡卡が手招きしますが、なぜか自分は入って行こうとせず二人を呼びます。入っていくと足元には罠が。
証明書を確認した大家も、卡卡という祺人の少年も胡八道と蘇玖儿の仲間でした。祺人は暑さだけではなく、タマネギ、唐辛子の匂いも苦手だと卡卡が教えてくれたので、山盛りのそれらと一緒に馬車に突き落とされた克哈と寒狰。
うまく捕らえられたと二人とも作戦成功を祝いながら馬車を走らせます。するとまた、蘇玖儿は急にめまいを感じてきました。
蘇玖儿は、ちょっと馬車の荷台の様子を見てくると言って中に入ると(気絶している?)寒狰に近付き手に触れます。やっぱり温かくて気持ちがいい。
実は目をつぶったまま、様子をうかがっていただけの寒狰。このバカ女は何をやっているんだ?と頭の中が?で一杯になります。
彼を家に連れて帰れたなら私の病気も治るのかもしれない。そうしたら長生きできるかしら……
長生きできるか… だと?
3話~11話あらすじ
- 3話・4話・5話あらすじネタバレ
- 6話・7話・8話あらすじネタバレ
- 9話・10話・11話あらすじネタバレ
12話~20話あらすじ
- 12話・13話・14話あらすじネタバレ
- 15話・16話・17話あらすじネタバレ
- 18話・19話・20話あらすじネタバレ
21話~29話あらすじ
- 21話・22話・23話あらすじネタバレ
- 24話・25話・26話あらすじネタバレ
- 27話・28話・29話あらすじネタバレ
30話~36話あらすじ
- 30話・31話・32話あらすじネタバレ
- 33話・34話・35話・36話あらすじネタバレ