「殺人事件ファイル ニューヨーク」(Netflix)第3話・第4話・第5話の解説と詳細

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「殺人事件ファイル ニューヨーク」(Netflix)第3話・第4話・第5話のネタバレ解説と詳細。

「LAW&ORDER」のクリエイターが贈る実録犯罪ドキュメンタリーシリーズで、アメリカ・ニューヨークの殺人課の刑事や検察官が、最も難しかったという殺人事件を振り返ります。

第3話はウォール街の清掃員失踪事件、第4話は億万長者の刺殺事件、第5話は連続暴行殺人事件に迫ります。

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第3話:清掃員の女性失踪事件

2009年7月7日、事件発生

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(C)Netflix

2009年7月7日。ウォール街のビルで清掃員をしていた46歳のエリダニア・ロドリゲスが、勤務中に行方不明になる事件が発生します。

エリダニアのシフトは午後5時から11時までで、いつも午後7時の休憩には家族と連絡を取っていました。この日も午後7時に休憩を取るはずが家族に連絡はなく、午後10時半にエリダニアの同僚から家族に連絡が入ります。

エリダニアが家に帰っているかを確認する連絡でした。しかし、エリダニアは家には帰っておらず、家族もこの電話で初めてエリダニアが行方不明になっていることに気がつきました。

すぐに家族は総出でエリダニアの捜索を始め、エリダニアの携帯にも電話を掛けます。ところが、エリダニアの姿はどこにもなく、携帯も留守電で繋がりませんでした。

エリダニアと同じビルで働く弟がビル内を捜索したり、ビルのセキュリティに確認しても、誰1人としてエリダニアの姿を見ていません。これまでエリダニアがこのような行動を取ることもなかったことから、家族はNY市警察に行方不明の通報をします。

ウォール街でこのような事件は珍しいということもあり、直ちにNY市警察は本格的な捜査に乗り出しました。

被害者の人物像と容疑者の浮上

エリダニアはドミニカ共和国出身で、1973年に渡米しました。その後、ヘロモニ・フィゲロアという男性と結婚して3人の子供をもうけます。

エリダニアは子供たちや兄弟の面倒を見るために学校を辞めるなど、献身的に子育てをしてきました。そのためエリダニアの家族は結束力が強く、行方不明から数時間で大勢の家族がエリダニアの職場のビルに集まり、彼女のことを心配していました。

それにもかかわらずヘロモニはその集まりの中に姿を現さなかったうえ、1度エリダリアと離婚して復縁した過去があることから、NY市警察はヘロモニを第1容疑者とします。

すぐにNY市警察はヘロモニに事情聴取を行いますが、ヘロモニは事件発生時に家にいたことが家族によって証言され、容疑者から除外されました。

ただ、家族の証言により、エリダニアが事件の数日前からストーカー被害に遭っていたことが判明します。エリダニアは勤務先のビルのエレベーターに乗る際、男に見つめられていたことが事件前に2回あったというのです。

しかも事件の2〜3日前には男に話しかけられ、エリダニアはあまりの恐怖から家族に相談し、1週間で今の職場を辞める予定でした。

この情報を受け、NY市警察はストーカーの男を突き止めて事情聴取を行いますが、NY市警察の徹底的な事情聴取の結果、この男は事件の参考人から外されました。

その後、事件当日のビルの監視カメラの映像を調べていたNY市警察は、エリダニアと同じビルで働く整備員のジョセフ・パボンの行動に不信感を抱きます。

このビルには32台のカメラがあるのにジョセフにはカメラに映っていない時間が45分もあるうえ、午後8時過ぎに突然地下に現れていました。

NY市警察はジョセフを重要参考人として呼び出し、事情聴取を行います。ジョセフは捜査に協力的で、エリダリアを最後に見たのは一緒に乗ったエレベーターで彼女を8階に降ろした時とのことでした。

ここまで何の矛盾もないジョセフだったものの、事情聴取を担当した刑事の1人がジョセフの服装に違和感を覚え、服を脱がせます。すると、ジョセフの体にはあちこちに引っ掻き傷のようなものがありました

ジョセフは真夏だというのに、防寒用の長袖シャツに半袖を重ねていた

ジョセフはこの傷を工事作業員の手伝いをしたことにより出来たものだと説明しましたが、アメリカでは労働組合の管轄かんかつを超えての作業は問題になるため、工事作業員の手伝いをするなどあり得ません。

そこでNY市警察はDNAの提出を求めると、ジョセフはすんなりDNAを提出しました。

とはいえ、この時点でジョセフが一切の犯罪行為を認めることはなく、ジョセフは解放されます。

同僚を逮捕

ジョセフの事情聴取を機にNY市警察はジョセフを第1容疑者とし、ひたすら尾行を続けました。現時点でジョセフを逮捕はできないにしろ、何かしらの情報が得られるかもしれないからです。

2009年7月11日、事件発生から4日後。NY市警察は再度エリダニアの職場のビルを大捜索し、ついに12階の工事現場のダクトからエリダニアの遺体を発見します。

真夏で腐敗が進んだことから死臭が漂い、遺体の発見に至りました。エリダリアは工業用テープで手を拘束され、口も同じテープで塞がれていました。

NY市警察立会いの下でエリダリアの検視が行われ、死因は窒息死であることが判明します。なお、検視では被害者の爪を切ってDNA検査を行います。

2009年7月17日、事件発生から10日後。エリダリアの検視の結果が出て、ジョセフのDNAが検出されます。

直ちにジョセフの逮捕状が取られ、尾行していたNY市警察がジョセフを逮捕します。ジョセフは弁護士を依頼する権利を行使したことで尋問を回避し、事件の動機が語られることはありませんでした。

ジョセフは最低25年から無期の懲役が言い渡された裁判でも遺族に謝罪しないどころか、泣き崩れる遺族を見て笑っていました。

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第4話:億万長者ハワード・ピルマー刺殺事件

1996年3月22日、事件発生

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(C)Netflix

1996年3月22日。キング・オブ・サプライを営む億万長者ハワード・ピルマーが、キング・オフィスサプライ社で遺体となって発見されます。

第一発見者は会計監査役で、朝5時半にハワードと遺体を発見して救急車を呼びました。キング・オフィスサプライ社は4階建のビルで、1階が店舗、4階に事務所があります。ハワードの遺体は4階のエレベーターの外、受付部分にありました。

検死の結果、ハワードは40回以上も刺されており、致命傷になるものだけでも5箇所もありました。そのうえ、死後の傷まであり、ハワードは心臓が止まった後もなお刺され続けたことが判明します。

1996年3月24日、事件から2日後。NY市警察は、公然とハワードの葬式に出席します。

これはNY市警察が家族を支持する気持ちを表明すると同時に、不審点を探すためでもありました。参列者は1000人以上にも上り、NY市警察は参列者を撮影します。

その後、NY市警察はハワードの妻ロスと、彼女の弟エヴァンに事情聴取を行います。ロスとエヴァンが最後にハワードに会ったのは、2人とも午後8時でした。

まず、夜6時半にエヴァンはハワードと一緒にジムに行き、昇級の話をしていました。エヴァンはコーヒー店の仕事より、高級取りの営業職を希望していたからです。

ジムの後、エヴァンはハワードと会社に向かい、ロスに会います。ロスには会社のセキュリティが複雑だったためハワードを残し、午後8時にロスとエヴァンは帰宅していました。

これによりハワードが午後8時までの行動が明らかになるも、依然として午後8時〜午前5時半までは空白の時間でした。1996年という時代もあり、会社に監視カメラはなく、捜査は難航します。

被害者の人物像と妻と弟の不審点

ハワードは40歳で、妻ロスと息子フィリップと共に暮らし、公私共に成功している全盛期でした。社交的で人当たりが良く、皆に好かれる人物です。

一緒に働く父とも仲が良く、会社で働く者たち全員とまるで家族のようでした。亡くなる5〜6ヶ月前には、父から商材印刷を扱う文具の事業を引き継ぎ、キングオフィス・サプライ社を経営していました。

また、ハワードには先見の明があり、まだNYの通りでコーヒーを飲む人などいなかった時代に、コーヒー・バーを併設して見事大ヒットさせたのです。キング・オフィスサプライ社に併設したコーヒー・バーには多くの人が集まり、新たな客層を得ました。

コーヒー・バーは息子の名前を取って”フィリップス・コーヒー”と名づけられ、キング・オフィスサプライ社の1号店の他に、カーネギー・ホールに2号店を出します。

コーヒー店は家族経営で、ハワードの妹と妻ロスが2号店で働き、ロスの弟エヴァンが1号店で働いていました。

ただ、実質的にフィリップス・コーヒーを経営していたのはロスとエヴァンで、ハワードはエヴァンのことをあまり良くは思っていなかったようです。

実際にエヴァンには近寄りがたい雰囲気があり、ハワードの好みのコーヒーを買おうとした際にはキレられたと、ピルマー家の子守が証言しています。

こうした不審な点は妻ロスにも見受けられ、捜査の過程で様々な裏の顔が明らかになります。事件前日にはハワードがロスと電話で言い争いをしていたり、ロスには以前の雇い主から16万ドルも横領した過去がありました。

ロスはこの横領について、「ハワードには内緒よ、離婚されて息子を取られる」と周囲に話しており、事実ハワードはロスと離婚したがっていました

ロスはハワードの死後、120万ドルの保険金を始め、キンググループの事業とコーヒー店、NYの高級アパートと複数の別荘に息子フィリップも相続しています。

1997年3月、事件から1年後。NY市警察は事件への関与が疑われるハワードの妻ロスと弟エヴァンの証拠を掴むべく、事件と同じ日にポスターを貼り出しました。

ポスターは事件現場のキング・オフィスサプライ社とフィリップス・コーヒー2号店に貼られ、未解決のままのハワードの事件に関する情報を求めるものでした。ところが、このポスターは営業妨害を訴えたロスとエヴァンによって剥がされてしまいます。

事件から21年後、妻と弟を逮捕

事件から3年後にはハワードの妻ロスを横領の疑いで逮捕し、NY市警察は彼女にプレッシャーを与えて罪を吐かせようとしますが、ロスがハワード殺害事件について語ることはありませんでした。

この頃にはDNA鑑定の技術も進歩しており、保管していた殺人現場の血痕がエヴァンのものだと判明するもこれだけでは証拠にならず、逮捕には至りませんでした。

2013年、事件から17年後。ハワード刺殺事件の捜査が再開され、NY市警察はまた全てを1から洗います。

そこで新たに捜査に加わった刑事がハワードの親友の存在に気づき、ロスとエヴァンの証言に矛盾を発見します。エヴァンはハワードと午後8時に会社に戻り、ハワードは仕事を続けたとのことでしたが、その夜にハワードは親友と試合観戦の約束をしていました。

ハワードは親友にエヴァンとのジムの後にスポーツバーに直行すると話していたことにより、犯行推定時刻の幅が午後8時〜午前5時半から、午後8時からの15分間に狭まります。その後もNY市警察はハワードの周辺人物を当たり、ロスとエヴァンが犯人だと確信しました。

2017年、事件から21年後。NY市警察はハワードの親友と当時のピルマー家の子守から得た証言を基に、ロスとエヴァンをハワード殺害の容疑で逮捕します。

2019年1月27日、事件から23年後。ロスとエヴァンの裁判が始まります。裁判は2ヶ月にも渡り、ロスとエヴァンは共に第2級殺人で有罪判決を下されます。ロスとエヴァンは最低25年から無期の懲役を言い渡されました。

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第5話:イースト・ハーレムの連続殺人鬼

殺人事件と暴行事件が連続して発生

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(C)Netflix

1998年6月2日。NYのイースト・ハーレムの公営住宅で、18歳の黒人女性が殺害される事件が発生します。

遺体は階段にあり、外傷はないことから窒息死と推測されました。彼女は身分証がなく身元不明でしたが、NY市警察が36時間以内の行方不明届を確認したことで身元が判明します。

被害者はラシーダ・ワシントンという18歳の少女で、大学に通いながら仕事もしていました。検視の結果、死因は窒息死で、性的暴行の痕跡としてDNAや体液も見つかりました。

1998年9月25日。ラシーダが殺害された公営住宅からそう遠くない別の公営住宅にて、15歳の少女が男に脅され、性的暴行を受ける事件が発生します。

犯行現場の階段には犯人のものと思しき衣服が残されており、NY市警察は衣服とDNA検査キットを検視局に送りました。

1999年1月。イースト・ハーレムの13歳の少女が性的暴行を受ける事件が発生します。

この時点ですでにラシーダ殺害事件と15歳少女の暴行事件で検出された体液が一致していたうえ、この13歳の少女暴行事件のDNAとも一致していました。つまり、一連の事件は同一犯の犯行であることが裏付けられました。

連続殺人犯の関与が浮上

ラシーダ殺害事件から8ヶ月後。NY市警察に匿名の女性から通報が入り、これが事件を解決に導きます。

通報者によれば、イースト・ハーレムでの事件に”エース”という男が関わっているとのことでした。このエースというのはアロン・マリク・キーという男のことで、1997年の未解決事件で取り調べを受けた人物だったのです。

捜査を進めるうちに、アロンが過去に起きた複数の未解決事件とも繋がっていることが判明します。アロンが関わった事件は、以下の通りです。

  • 1991年13歳の少女(パオラ・イレラ)殺害事件
  • 1994年15歳の少女暴行事件
  • 1997年19歳の少女殺害事件
  • 1998年18歳の少女(ラシーダ・ワシントン)暴行殺人事件
  • 1998年15歳の少女暴行事件
  • 1998年13歳の少女暴行事件

これらに加え、アロンには強盗と窃盗の前科がありました。なお、1997年の未解決事件の取り調べの際には、NY市警察はアロンの顔写真を撮影していました。

この顔写真が暴行事件の被害者の証言を基に描かれた似顔絵と酷似していたため、アロンは容疑者となります。

連続殺人犯を逮捕

1999年2月8日。NY市警察はアロンの動きを追っていたところ、アロンが窃盗事件を起こします。

アロンは大型家電量販店でコンピューターを買い、自分の古いコンピューターを新品の箱に入れて返品しようとしました。しかし店に通報され、窃盗罪で逮捕されます。

そこでNY市警察はアロンが使ったコーヒーカップからDNAサンプルを入手し、検視局にDNA検査を依頼します。すると、アロンのDNAと犯行現場のDNAが一致し、アロン逮捕の準備が整いました。

1999年2月19日。捜査に勘付いたアロンは、16歳の恋人アンジェリークとマイアミに出掛けていました。

直ちにNY市警察からマイアミ警察に情報が共有され、滞在先のマイアミ・サン・ホテルにSWATを導入してアロンを逮捕しました。逮捕当初から黙秘を続けるアロンでしたが、別れを告げにきた恋人アンジェリークには全てを打ち明けます。

これにより事件の全貌が明らかとなったうえ、1991年のパオラ殺害事件のDNAも一致しました。こうしてアロンには、3件の殺人と4件の性的暴行で逮捕状が出ます。

逮捕から3ヶ月後に裁判が始まると、アロンは弁護士の制止も振り切って証言台に立ち、驚きの証言をしました。それは、アロンがNY市検視局の”違法な臓器摘出計画”を知ったがゆえに、警察側がアロンを消すために罪を着せたというものでした。

2000年12月16日アロンは9年間で7人の少女への性的暴行と3人の殺害により、仮釈放なしの終身刑を言い渡され、最低409年から無期の懲役が下されました。

また、この事件とセントラルパークでの事件を担当した当時5年目の検事補は、これらの事件を機に検事補を辞職しています。その理由は、自分のプライベートまで犠牲にして働き詰めだったことや、事件に真摯に向き合うあまりに心をすり減らしたからでした。

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本ページの情報は2024年3月時点のものです。最新の配信状況は[Netflix] にてご確認ください。