【アスダル年代記】のあらすじと解説。本作は、韓国初のジャンルとなる”古代ファンタジー時代劇”。骨太のストーリーと、制作費用74億円をかけた壮大な世界観が味わえる。また、本作で2役を演じるソン・ジュンギの演じ分けにも要注目!
【アスダル年代記】あらすじ
物語の舞台は、国も王も存在しない「アス」と呼ばれる古代の大地。アスの中心都市であるアスダルの地には、人間と獣人間(ネアンタル)がいた。セニョク族やへ族を始めとする人間たちは、ネアンタルの並外れた身体能力を恐れて同盟を申し入れるが、拒否されたため戦うことにした。とはいえ、ネアンタルを相手に普通に戦っても勝ち目がない彼らは、贈り物と称して“疫病にかかった家畜”を送り付けてネアンタルを全滅させようとする。
※その疫病にかかるのは獣のみ。人間には害がない。
何も知らずに贈り物を届けたのが、後に生まれてくる主人公の母・アサホンだった。彼女は、目の前で次々とネアンタルが死んでいく光景に恐怖しながらも、幼い子供や赤子だけは守ろうと尽力する。そして、卑劣な手を使った人間たちのところには帰るまいと決心したアサホンは、ネアンタルの生き残りであるラガズと一緒に暮らし始め、やがて愛し合うようになる。そうして2人の間にできた双子の子供が、主人公のウンソム(ソン・ジュンギ)とサヤだった。
2人が生まれて間もなく、人間によるネアンタル狩りが始まりラガズは死亡し、双子の片割れであるサヤは連れ去られてしまう。サヤを連れ去ったのは、人間たちを指揮するタゴン(チャン・ドンゴン)という男だった。彼は、サヤにネアンタルの血が流れていると知りながら殺しはせず、知り合いの女性に預けてこっそり育てさせた。
*
アサホンは、夢で見た呪いからウンソムを守るために、呪いの力が及ばないであろうイアルクの地へ行くことにした。赤ん坊のウンソムを連れてこの地を離れた彼女は、10年の月日をかけてイアルクにたどり着くが、その日のうちに死んでしまう。ひとり残されたウンソムは、イアルクの地でワハン族と暮らすことになった。
しかし、他の人間とは外見が異なる(紫色の唇や、背中の模様)ウンソムは、青年になってもなかなか馴染めずにいた。彼の超人的な能力や聡明さも、ワハン族にとっては理解できないものだったため、ウンソムが何かをするたびに非難した。そんな日々の中、ウンソムはいつも自分をかばってくれるタニャ(キム・ジウォン)に惹かれていく。
ある日、イアルクの地にアスダルからやって来たデカン部隊が現れる。彼らは、ワハン族が見たこともないような立派な武器を持ち、ワハン族が考えたこともない“乗馬”をし、着ている鎧の頑丈さも自分たちとは比べ物にならないほどだ。両者の使う言語は同じでも、文明の差は明らかだった。
そんなデカン部隊に太刀打ちできるわけもなく、ワハン族の村は壊滅状態となり、タニャを始めとする数名のワハン族は奴隷として連行された。生き延びたウンソムは、タニャを救うためにアスダルの地へ向かう。
主要種族の解説
ヒンサン族(白山族)
アスダル地で暮らす人間種族。ヒンサン族の中でも、神の声が聞こえるアサ氏一族は高貴な存在として祭事を司っている。アサ氏一族は、数万人に1人が持つ“神に会える”霊能力を備えた人物を中心に人を集め、氏族を拡大してきた。そんな彼らは、この地の最古の氏族であるためアスダル一の権力を誇っている。ウンソムの母親も、もともとはアサ氏だった。
セニョク族
アスダル地で暮らす人間種族。軍事を司る。ヒンサン族やへ族とは、連盟を結んでいるため協力関係にある。タゴンの指揮下にあるデカン部隊は、各地を侵略し、奴隷として連行した者たちを売って資金を得ている。アスダルの地とイアルクの地は「大黒壁」という巨大な崖で隔てられていたが、タゴンが数年かけて大黒壁に巨大なはしごを架けたことで行き来が可能になった。
へ族
アスダル地で暮らす人間種族。火の城塞を住居にしている。青銅を作る技術と、農耕技術を持つ。ヒンサン族やセニョク族と連盟を組んでいるが、彼らより権力が低い。
ネアンタル族
人間の姿をした獣。紫色の唇、紫色の血、背中には青い模様がある。強大な力と速さ、月のない夜でも見える視力を持ち、夢を見ることのできる霊能力もある。ウンソムの父親もネアンタルだった。
ワハン族
イアルクの地で暮らしている。アスダル地の人間たちと同じ言語を話すが、アスダルに比べて文明は発達していない。ワハン族の中の氏族は“夢を見る”能力がある。
【アスダル年代記】感想
今までに視聴した韓国ドラマの中で、トップクラスの壮大な世界観だった。韓国版の【ゲーム・オブ・スローンズ】だと言われているのも頷ける。本作は、国や王の存在しない古代が舞台となっており、種族によって文明の発展具合が異なったり、架空の言語を話す種族もいたりと細部まで凝っている作品だ。
(本作に出演している唐田えりかも、架空の言語を話している)
年月の数え方も「満月4回分」と表現したり、世界観に合ったセリフにもこだわりが感じられる。登場人物は数え切れないほどいるが、韓流ファンにとってはお馴染みの顔ぶればかりなので混乱することもなかった。ただ、普段あまり韓国ドラマを見ない方は、相関図や 登場人物一覧 が必須かもしれない。これだけ多くの登場人物がいながら、それぞれに役割や個性があるのが凄い。
ただの陽気な“おばさん使用人”かと思いきや武術がめちゃくちゃ強かったり、権力第一のお嬢様テアラは、ドライで現実主義なのに愛に一途な面があったりする。タゴンの人物像も興味深く、文武両道の天才で完璧なように見えても、幼いころに父親に殺されかけた心の傷があったりと、主要人物の誰もが個性を持っている。ストーリーも非常に面白く、種族間の争いや策略、そこにいくつもの“謎”も加わって見る者を飽きさせない。
他の見どころとしては、双子の2役を演じたソン・ジュンギの演技力の高さだ。正統派主人公のウンソムと、隠れるようにして孤独に生きてきたサヤ。顔は同じでも、性格が全く異なる光と影のような2人を完璧に演じ分けている。キャスティング、演技力、ストーリー、世界観、アクション、その全てが高水準で文句なしに面白かった。
これほどの素晴らしい大作でありながら、韓国では古代ファンタジーという“初のジャンル”だったからか、視聴率は振るわなかったらしい。未完結のまま終わったので早いところ続きを制作してほしいものだが、これだけのキャスト陣を再び集めるのは容易ではなさそうだ。
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