ネタバレ解説と考察:何故スティーヴンはニコラスを殺害しなかったのか
真実を知ったスティーヴンは「決着をつける」と言って、キャサリンの息子ニコラスが入院する病院へと向かいました。このスティーヴンの「決着をつける」との発言は、ニコラスを自身の息子ジョナサンと同じ目に遭わせることを指しています。つまり、スティーヴンはニコラスを殺害することで、キャサリンにも息子を失う辛さを味わせようとしたのです。
しかし、いざニコラスを手にかけようとしたスティーヴンは、ニコラスの寝言を聞いて我に帰り手を止めました。ニコラスが「ママ、ママ」と母を求め、そばにいたスティーヴンの手を握り、涙ながらに「ママ、行きたいよ」と懇願したからです。この時、ニコラスがどんな夢を見ていたのか、この発言が何を意味するのかは分かりません。
ただ、ニコラスが涙を流しながら懇願している様子から察するに、文字通りどこかに行きたいという意味ではなく、死を意味する逝きたいか、解放してほしいとの意味のように感じます。
字幕では「行きたい」という漢字が使われていましたが、逝くと言う漢字は他者目線で使われることの方が多いため、「行きたい」という漢字が使われた可能性が高いです。
いずれにせよ、スティーヴンはあのニコラスの発言を死を望んでいる、もしくは現在の状況からの解放を望むものと捉えたのだと思われます。もし死を望んでいると捉えたのならば、我が子が死を懇願することが親にとってどれほど辛いことかはスティーヴンならよくわかるでしょうし、現状からの解放なら自分のせいだと心苦しくなったはず。
だからこそ、スティーヴンは自分がどれほど恐ろしいことをしようとしているのかに気づき、ニコラスの殺害を止めたのでしょう。その上、スティーヴンはキャサリンの告白により、自分の妻と息子が狂人だったということが確信に変わったため、最後くらいは善い行いを選んだのかもしれません。
もしあのままニコラスを手にかけていたら、スティーヴンはずっと悪者のままでしたが、それをせずにロバートに真実を話すことで彼なりの償いをしたのでしょう。