「馭鮫記(ぎょこうき)後編」あらすじ全話をネタバレ有りで最終回まで詳しく紹介。鮫族王子の長意に助けられた万花谷の御霊師の紀雲禾は、北淵で軟禁されます。
紀雲禾は余命僅かの状態で生き永らえており、生死を彷徨う夢の中で仙師の寧清が密室に隠している絵姿の女性と出会いました。その正体を知った紀雲禾は最期の使命を悟り、万花谷の御霊師と北淵の地仙の戦いを止めようとします。
【馭鮫記:後編】全話一覧
読みたい話数をクリックでジャンプします
1話:湖心島
北淵、冰湖。紀雲禾は、湖心島の雲苑にいました。
鮫族の王子の長意に助けられた紀雲禾は、そのまま長意によって湖心島の雲苑に軟禁されていたのです。これには紀雲禾の仙侍の洛綿桑と万花谷戦部の元統領の雪三月が黙ってはおらず、長意に軟禁を止めるよう猛反発します。
しかし、紀雲禾に傷つけられたことを根に持つ長意が2人の言葉に耳を傾けることはありませんでした。それでも長意は空明に治療をさせたり、滋養がつく食事を用意させます。
紀雲禾を治療した空明によれば、紀雲禾は骸も同然の状態で、順徳仙姫の汝菱との戦いにより体がひどく衰弱したとのことでした。また、紀雲禾が施された天仙と地仙の霊力を体に注入することは禁忌であり、ゆえに寒霜が解けても体内で大きな反発が起きるようです。
そんな中、狐王の卿玄は長意により氷で封印されることが決まります。卿玄は仙師の寧清と戦った際、一族を守ろうと命を賭けて皆を非難させたことで霊力を使い果たしていました。
霊力が尽きた卿玄は狐族の凝丹術で何とか経脈を保っている状態だったため、氷で封じて体を守り目覚めるのを待つことにします。王女の卿瑶は悲しみに暮れながらも、何としても父を救うと誓いました。
仙師府。汝菱は紀雲禾と戦いで顔に深い傷を負い、ずっと寝込んでいました。
ようやく目を覚ました汝菱は、側に付き添っていた弟で天君の汝釣の顔を見るや否や師匠の寧清のことを尋ねます。寧清が1度も来ていないことを知った汝菱は汝釣の制止も振り切り、鏡の前へと走り出しました。
汝菱は鏡に映る己の顔の醜さに絶望し、醜くなったから寧清は来ないのだと泣き喚きます。仕舞いには全て汝釣のせいだと決めつけ、顔を返せと汝釣に迫りました。
その後、汝菱の元に寧清が現れ、寧清は必ず治してやると約束して自ら治療を施します。寧清が治療に用いたのは幽虫という薬で、腐肉を取り除く代わりに凄まじい痛みを伴うものでした。
その痛みは火に焼かれるよりも痛いと言われるほどで、汝菱は痛みのあまり泣き出してしまいます。何とか治療を乗り切った汝菱は、傷を負わせた紀雲禾と長意に対して復讐を誓いました。
寧清は汝菱を気遣う反面、書斎の密室で儀式のようなことに勤しんでいました。壁に掛けられた絵姿からは青黒い煙のようなものが出現し、早く元の姿に戻らせるよう寧清を煽ります。
2話:鮫人の烙印
仙師府。仙師の寧清は、書斎の密室の絵姿から現れた青黒い煙のようなものに、早く元の姿に戻すよう煽られていました。
どうやら寧清はそれと命を賭けた血の契りを交わしており、寧清の今の力もそれが授けたもののようでした。それなのにいつまで経っても約束した大乱を起こそうとしない寧清に、青黒い煙は早く大乱を起こせと苛立ちを露わにします。
そんな青黒い煙とは対照的に寧清は冷静で、大乱を起こすならとことんやると宣言しました。また、契約を盾に脅すそれに対しては、殺される前に永遠に絵の中に封印してやると余裕を見せます。
北淵。湖心島の雲苑に軟禁される紀雲禾の元に、狐族の王女の卿瑶が現れます。
卿瑶は紀雲禾の世話係をしていた侍女を通じて、紀雲禾が赤い狐火を扱うことを知り、自ら真相を確かめにやって来たのです。
卿瑶は食事を届けにきたふりをして紀雲禾に接近し、攻撃を仕掛けます。そこで紀雲禾が卿舒の隠魂針を扱うのを目の当たりにした卿瑶は、紀雲禾が卿舒を殺害したと勘違いします。
卿瑶が卿舒の姪だと気づいた紀雲禾は卿舒から霊力をもらったことを明かしますが、卿瑶は縁者でもない紀雲禾にそんなことをするはずかないと食ってかかりました。そして、紀雲禾の強い狐火は卿舒の霊力を吸い尽くした証拠だと結論づけ、今日こそ敵を討つと宣言します。
卿瑶が紀雲禾に更なる攻撃を仕掛けようとしたその時、2人の間に長意が現れ、卿瑶の攻撃を打ち消しました。長意は卿瑶を外に連れ出し、紀雲禾は卿舒を殺害していないことに加え、紀雲禾は自分だけの囚徒なのだとして雲苑への立ち入りを禁じます。
紀雲禾は霊力の反発により衰弱しており、日に日に体が弱っていました。いよいよ余命わずかだと悟った紀雲禾は最後の力を振り絞り、雲苑の周りに張られた長意の結界を破ろうと奮闘します。
紀雲禾は狐火の力を使って何とか結界を破ると、長意でも捜せない雪山を目指すことにしました。念願の自由を堪能する紀雲禾はとても幸せそうで、満面の笑みを浮かべながら雪原を駆け抜けます。
しかし結界が破れたことはすぐに長意に感知され、雪山を前に紀雲禾は長意に捕らわれてしまいました。それどころか、紀雲禾は長意によって鮫人の烙印を右耳につけられ、紀雲禾の居場所は長意の目が届く範囲のみだと断言されます。