「馭鮫記(ぎょこうき)前編」19話・20話・21話あらすじネタバレと感想。鮫人の長意の作戦が功を成し、長意たちは狐族と同盟を結ぶことができました。北淵を率いることになった長意は、更なる助っ人として青羽鸞鳥に協力を仰ぎます。その頃、紀雲禾も新たな協力者となった天君の汝釣を通じて、青羽鸞鳥に協力を求めていました。
第19話:霊丹の修復
北淵。鮫人の長意の作戦は成功し、長意は凌霜台の台主の朱凌と順徳仙姫の汝菱を追い詰めます。
長意の刀が飛んできた汝菱は、思わず仙師の寧清に助けを求めました。汝菱の声は仙師府にいる寧清に届き、寧清は汝菱と朱凌を救うため仙術で呼び戻そうとします。
長意と狐族の王女の卿瑶は仙術で汝菱たちを引き留めようとするも後一歩及ばず、汝菱たちを逃してしまいました。とはいえ、長意の作戦により狐族は凌霜台と狐王の卿玄を取り戻すことができました。
この活躍が認められた長意たちは狐族と同盟を組むことに成功し、これからは狐族も長意たちと生死を共にすることになります。しかし話し合いの途中で長意の霊丹は砕け、倒れ込んだ長意はそのまま危篤に陥ります。
直ちに長意は卿玄と卿瑶によって凝丹術を施され、何とか一命を取り留めました。長意の霊丹も凝丹術により、完全に修復されました。
従棘所。紀雲禾は従棘所の結界が弱まっていることに気づき、なぜ寧清の力が弱まったのかと不思議に思っていました。※従棘所の結界は、仙師の寧清の力に依存している
これはまたとない機会だと考えた紀雲禾は仙術で結界を破り、従棘所から抜け出します。外には仙師府の者たちがおり、紀雲禾は近くの部屋に身を隠しました。
すると、そこは仙師府の者たちですら立ち入りを禁じられる寧清の書斎で、部屋の中には不可解な風の流れがありました。紀雲禾は風の流れを辿り、密室を発見します。
密室の壁には汝菱に似た絵姿が掛けられており、絵姿の前には2本の蝋燭が立てられていたりと、まるで祭壇のようにも見えます。紀雲禾は絵姿の古さから描かれているのは汝菱ではないと見抜き、ふと絵姿に触れました。
その瞬間、絵姿は金色に光り輝き、みるみるうちに周囲から金色のオーラみたいなものを吸い取っていきます。突然の出来事に驚く紀雲禾の元に寧清が現れ、密室には入ってはならないと告げて紀雲禾を従棘所に連れ戻しました。
紀雲禾は従棘所に戻ると、寧清に仙師府が揺れた理由を尋ね、北淵で汝菱が長意に傷つけられたことを知ります。紀雲禾はさすが長意だと感心しつつも寧清に対しては、これは始まりゆえ用心すべきだと忠告しました。
第20話:繋がる縁
従棘所。汝菱は弟で天君の汝釣が兵を出してくれないことに苛立ち、その怒りを紀雲禾に向けます。
いよいよ紀雲禾を殺そうとする汝菱でしたが、そこへ駆けつけた仙師の寧清が止めに入りました。仕方なく汝菱は紀雲禾を殺すことを諦め、北淵を制圧したら紀雲禾が命乞いする姿を皆に見せしめると宣言します。
すると、紀雲禾は北淵の勝敗に互いの命を賭けるよう持ち掛け、汝菱はそれを受け入れました。ところが、寧清は紀雲禾に対し、例え何があろうとも決して汝菱は傷つけさせないとお灸を据えます。
北淵に出征する姉の汝菱を止められなかった汝釣は、寧清が大事にしている紀雲禾にこの局面を打破する力があると考え、紀雲禾を訪ねます。汝釣は紀雲禾に大きな問題に直面していることを見抜かれ、人を試すような紀雲禾の無礼な態度に苛立ちを露わにしました。
それでも紀雲禾の己の心に従うとの発言には心を打たれたようで、汝釣は北淵での戦を止めるべく紀雲禾に協力を仰ぎます。紀雲禾は汝釣に協力することを快諾し、寒霜の秘密と従棘所の不可解さを汝釣に共有します。
紀雲禾に恨みを持つ罪仙が従棘所に連れてこられた際、なぜか彼らの霊力が消滅していた
紀雲禾はこれらを寧清による仕業と考え、寧清が霊力を奪って密室の絵姿に移していると結論づけていました。そして、寧清の狙いは乱であり、汝菱に紛争を起こさせて無限の殺戮を企んでいると付け加えます。
そこで紀雲禾は仙侍の洛綿桑を見つけ出し、楽游山にいる青羽鸞鳥に協力を求めに行かせるよう汝釣に託しました。
北淵。鮫人の長意は、凌霜台に囚われた万花谷の弟子たちが寒霜の発作に見舞われているとの報告を受けます。
直ちに長意と空明で状況を確認しに行くと、空明は自作の薬を使って治療を施しました。それを不思議に思った長意は空明を問い詰め、寒霜は寧清が作ったもので、うなじの霜花は空明が届けていたことが判明します。
その後、北淵では長意らと狐族による今後の計画についての話し合いが行われました。北淵が強大な力を持つ仙師府に立ち向かうには更なる加勢が必要だとして、青羽鸞鳥に協力を仰ぐことにします。青羽鸞鳥の加勢があれば帰順する者と増えることが見込まれるゆえ、青羽鸞鳥と面識のある長意と空明が楽游山へと向かうことになりました。
その頃、楽游山では離殊と雪三月が再会を果たしていました。離殊は必死に許しを乞うも雪三月が受け入れるはずもなく、離殊は迎えにきた侍従の大歓と小歓と共に崇吾山へ帰ることを決意します。
第21話:集結する仲間たち
楽游山。空明は青羽鸞鳥に加勢してもらうべく、楽游山を訪れていました。
すると、そこで空明は雪三月と離殊に遭遇します。空明は長意の使いとして青羽鸞鳥の力を借りにきたことに加え、紀雲禾が長意を騙して刺したことを明かしました。
しかし雪三月に紀雲禾が信義に背くはずがないとの理由で疑われ、適当なことを言うなら命を取ると啖呵を切られてしまいます。見かねた離殊が止めに入り、酒好きの青羽鸞鳥に会うなら手土産を用意したほうがいいと空明に助言しました。
離殊の言葉を鵜呑みにした空明は離殊の助言通りに九寒洞でひと晩冷やした酒を手土産にすることにして、麓で買ってきた酒を九寒洞に置きます。空明が九寒洞から立ち去ろうとしたところ、紀雲禾の仙侍の洛綿桑とすれ違いました。
慌てて九寒洞に戻った空明は、青羽鸞鳥のために用意した酒を飲もうとする洛綿桑の姿を目撃します。洛綿桑は酒の匂いを追って九寒洞に来たようで、空明は酒を取り返そうと奮闘します。
ところが、空明が洛綿桑を吹き飛ばした衝撃で九寒洞の扉が閉まり、2人は九寒洞に閉じ込められてしまいました。実はこの扉は青羽鸞鳥による仕掛けが施されており、外からしか開かないようになっていたのです。
空明と洛綿桑は成す術もなく、楽游山にいる雪三月と離殊が来るのを待ちます。とはいえ辺り一面が冷気に包まれる九寒洞に無事でいられるはずもなく、やがて空明と洛綿桑の顔は凍り始めました。
ついに耐えきれなくなった洛綿桑は空明が用意した酒を飲み干し、空明にも口移しで酒を飲ませました。すっかり泥酔した洛綿桑は、酔った勢いで空明に抱きつき暖をとります。
従棘所。紀雲禾と汝釣の密会は続いており、2人は今後の計画を練っていました。
まず、紀雲禾は時機を見て汝釣によって解放されることが決まり、紀雲禾が気にかける軽罪の罪仙たちは汝釣の令牌を使って紀雲禾が救出することになりました。
次に、汝釣は姉の汝菱を敵視する紀雲禾に対し、汝菱を傷つけないよう求めます。紀雲禾はそこまで寛容にはなれないとはしつつも、身を守る必要がなければ汝菱を攻めないことを誓いました。
その後、紀雲禾は従棘所を訪れた寧清と共に書物を読んでいたところ、ある1冊の書物に書かれた珍しい記述を見つけます。それは、”炭毒”というものに関する記述でした。
「一夜にして亡くなった北方の貴族の夫婦は安らかな死に顔だった。当時祟りだと言われていたものを作者が原因を突き止めた。風の通らぬ部屋で炭を焚いたからで”炭毒”と称される。」
紀雲禾の話に静かに耳を傾けていた寧清は、その本は”かの者”が記したと明かします。