「馭鮫記(ぎょこうき)前編」5話・6話あらすじネタバレと感想。鮫人の長意は雪三月の仙侍の離殊から恋愛指導を受け、与えられる側から与える側に転じて紀雲禾のために様々なことをします。改めて長意の善意に触れた紀雲禾は任務に背き、長意を救って自身も雪三月らと共に万花谷からの脱出を決意します。
第5話:恋心
※本記事は、物語が前後する箇所があります。
万花谷。鮫人の長意は、戦部統領の雪三月の仙侍の離殊から恋愛指導を受けていました。これは、御霊師の紀雲禾の仙侍である洛綿桑から恋愛相談を受けた離殊が、助言すべきは長意の方だとしたからでした。
純粋な長意は興味津々で、離殊の体験談を用いた女子の扱い方に耳を傾けます。そこで長意は自分から相手の機嫌を取ること、相手が喜ぶことをするということを知りました。
その頃、長意のいる思過窟の外には洛綿桑と紀雲禾の姿があり、ちょうど洛綿桑が紀雲禾を連れて来たところでした。離殊が協力してくれると聞かされた紀雲禾は、本当に離殊が役立つのかと半信半疑です。
そこへ中から離殊が現れ、長意が泡を吹いたと紀雲禾に助けを求めました。しかしこれは離殊の作戦で、たくさんのシャボン玉のような泡が舞う中で長意が待っていました。
紀雲禾は長意に呼ばれて側に行くと、この前の沐浴のお礼がしたいと沐浴を余儀なくされます。断ろうにも沐浴を恋人と親交を深める方法だと勘違いしてしまった長意の誤解を解くのは困難で、紀雲禾は成す術もなく沐浴を受け入れるしかありませんでした。
そんな長意に対して紀雲禾は、恋人と親交を深める方法は他にもあると話します。すると、外から一緒に寝るよう促す洛綿桑の声が聞こえてきました。
長意は紀雲禾が寝ることが好きなのだと受け取り、2人は一緒に寝ることになりました。眠りについた紀雲禾は寒霜の影響で凍え始め、それに気づいた長意は自ら熱を発して紀雲禾を温め続けます。
目を覚ました紀雲禾は、熱に弱い鮫人の長意が自分を温めるために熱を発していたことに気づき、長意の体を案じます。そして、どこまでも真っ直ぐで優しい長意を騙し続けることに心を痛めていました。
そんな中、紀雲禾と雪三月は谷主の林滄瀾の仙侍である卿舒に呼び出されます。紀雲禾たちが呼び出された理由は、地仙出身である仙侍と御霊師の恋仲が密告されたからで、これから真偽を確かめるとのことでした。
真偽を確かめるには恋心の有無が判別可能な”情鏡”を使い、鏡に血を垂らすと恋心を抱く者の血が相手の血に溶けます。早速、雪三月と離殊から情鏡を使った判定が行われ、続いて紀雲禾と長意も鏡に血を垂らします。
ところが、恋仲の2組の血が微動だにしなかったのに対し、谷主の息子の林旲青の仙侍である思語の血だけは溶けました。
第6話:決意
思過窟。紀雲禾は仙侍の洛綿桑を通じて長意に呼び出されます。
洛綿桑によれば、長意は紀雲禾がライバルの林旲青を謹慎に追いやり、思語を亡き者にしたことに感激して贈り物をしたいとのことでした。
早速、紀雲禾が思過窟へとやって来ると、そこには雪を降らせる長意の姿があり、長意の周りにはしんしんと雪が降り積もっていました。長意は紀雲禾が雪を見たがっていることを洛綿桑から聞き、雪を紀雲禾への贈り物にしたのです。
紀雲禾は長意の贈り物に喜びますが、この雪がお礼ではなく長意が紀雲禾のためにしたことだと知り、複雑な表情を浮かべます。そんな紀雲禾に更なる追い打ちをかけるかのように長意は、紀雲禾と共に陸で生きるという決意を明かします。
そこで紀雲禾は、もし紀雲禾が悪党で信じるに値しない者ならどうするかと長意に尋ねました。すると、長意は鮫人は心の声を聞くとしたうえで、自分の心は紀雲禾を信じられると言っていると得意げに答えました。
まだ自分の本心もわからずに戸惑う紀雲禾は、これまで聞き出せずにいた長意が順徳仙姫の汝菱を狙った理由についても尋ね、驚きの真相を知ります。それは、長意が汝菱を狙ったのではなく、海に落ちた汝菱を助けたところを捕らえられたというものでした。
実は長意は罪を犯してなどおらず、汝菱の仙侍になることを拒んだせいで捕らえられていただけだったのです。改めて長意の善良さを知った紀雲禾は任務に背き、長意を海へ逃して雪三月らと共に万花谷から脱出することを決意します。
雪三月の家。紀雲禾は雪三月の仙侍の離殊を訪ね、今後の計画を練ろうとしていました。
雪三月は紀雲禾と長意が偽の関係であることを知らないため、この計画は雪三月には知られないようにするはずが、そこへ雪三月が戻ってきてしまいます。全てを知られた紀雲禾は改めて雪三月の信頼を得るべく、1000年前に青羽鸞鳥を封じた十方陣の秘密を教えることにしました。
1000年前、御霊師の頭領だった寧若初が自らの命と引き換えに、万花谷に十方陣を敷いて青羽鸞鳥を封印した
十方陣があるゆえ万花谷は守りが堅い
問題は陣眼のある場所で、陣眼は誰にもわからぬよう隠してあり、十方陣を敷いた御霊師たちも消息不明でした。唯一、陣眼の場所を知るのは谷主の林滄瀾で、息子の林旲青も知っている可能性があります。
とはいえ、今の紀雲禾たちにとっては守りの薄い場所を見つけ、万花谷を抜け出すことが先決です。そこで離殊が騒ぎを起こし、その隙に紀雲禾が解毒薬を盗んで逃げることにします。
ところが、雪三月と離殊は林旲青の罠にかかり、囚われの身となってしまいました。紀雲禾も林旲青に呼び出され、雪三月たちの取り調べに同行させられます。