「馭鮫記(ぎょこうき)前編」9話・10話あらすじネタバレと感想。鮫人の長意は寒霜に苦しむ紀雲禾の命と鮫尾を天秤にかけられ、苦渋の決断を下します。また、谷主の息子の林旲青は紀雲禾を守るため、自ら父を排除して谷主になることを決意します。
第9話:鮫尾
※本記事は、物語が前後する箇所があります。
思過窟。鮫人の長意は、谷主の息子の林旲青に尾を差し出すよう迫られていました。
長意が谷主らの前で口を利いたことで後がなくなった林旲青は父の期待に応えるべく、何としても鮫尾を勝ち取る必要があったのです。
ところが、鮫尾は鮫人が望まぬ限りは切り落とせず、長意が受け入れるわけもありませんでした。
そこで林旲青は御霊師の紀雲禾を利用して、自ら尾を切り落とすしかない状況に長意を追い込みます。紀雲禾は谷主らの前で長意の口を開かせた際、谷主の林滄瀾から称えるふりをして寒霜の発作を起こされていました。
しかも紀雲禾が奪った解毒薬は偽物で、このままでは紀雲禾の命は3日と持たない状態でした。事情を把握して怒りを露わにする長意に対し、林旲青は紀雲禾と鮫尾のどちらを取るのか腹を括るよう促します。
紀雲禾の家。寒霜に苦しむ紀雲禾の元に、御霊師で友人の瞿暁星がやって来ます。
瞿暁星は長意に頼まれ、紀雲禾の様子を見にきていました。長意が鮫尾を断つよう迫られていると知った紀雲禾は、誰も信じないでとの伝言を瞿暁星に託します。
紀雲禾は谷主らの思惑に気づいており、長意に尾に切らせる手段が自分を苦しめる以外にないのだと踏んでいました。そのため紀雲禾は自ら苦しむことを選び、長意を守ろうとします。
思過窟。瞿暁星は長意を訪ね、誰も信じないでという紀雲禾からの伝言を伝えます。
また、長意が尾を守り抜けば紀雲禾も助かると、決して屈しないよう念を押しました。その後、長意は林旲青に連れられて寒霜に苦しむ紀雲禾を目の当たりにします。
今にも息絶えそうな紀雲禾の姿に心を痛めた長意はその場に飛び上がり、自ら鮮やかな尾を断つと、林旲青に差し出しました。長意は足を痛めながらも紀雲禾の元へと歩み寄り、林旲青から貰った解毒薬を紀雲禾に飲ませます。
たちまち元気を取り戻した紀雲禾は、全ての原因は自分にあると後悔と責任を感じていました。長意の尾を取り戻すことはできなくとも、せめて家族の元に帰してあげたいと東海に家族を捜しに行こうとします。
すると、気を失っていた長意が目を覚まし、紀雲禾に償うなら望みを叶えてほしいと告げます。長意の望みは、海に戻れなくても紀雲禾のいる場所が家になるというものでした。
紀雲禾は改めて長意に謝罪したうえで、林旲青が冷徹となった理由は自分にあると過去の出来事について話し始めます。紀雲禾が谷に連れてこられた時の林旲青は優しい少年で、すぐに2人は本当の兄妹のように仲良くなりました。
しかし、林滄瀾は軟弱な林旲青を変えるため、紀雲禾に林旲青を大量の蛇がいる霊蛇窟へ突き落とさせました。これを機に林旲青は父の思惑に気づき、これまでとは打って変わって父の望み通りの冷徹な人間になったのでした。
第10話:兄妹の絆
万花谷。谷主の息子の林旲青は霊蛇窟の上で物思いに耽っていたところ、紀雲禾の友人で御霊師の瞿暁星から紀雲禾に対する特別な感情について問われます。
瞿暁星は十方陣が破れた日から林旲青の様子がおかしいことに気づいており、林旲青が紀雲禾を徹底的に打ち負かそうとしないことを不思議に思っていました。今後も紀雲禾の邪魔をするなら2度と信じないと啖呵を切る瞿暁星に、林旲青は紀雲禾を苦しめる寒霜の秘密を明かします。
そして、自分は父である林滄瀾が警戒するゆえ表立って紀雲禾を救えないとして、瞿暁星に右腕になってほしいと打診しました。思わぬ展開に驚く瞿暁星でしたが、紀雲禾を救うために林旲青の右腕となることを受け入れます。
ただ、何のために紀雲禾を助けるのかという瞿暁星の質問に、林旲青が答えることはありませんでした。そこへ林旲青の配下が現れ、林旲青に手を出したことで紀雲禾が罰を受けているとの報告を受けます。
すぐさま林旲青たちは紀雲禾の元に向かいますが、公平を期すには手を出された林旲青が自ら鞭打ちを行うべきだと鞭を差し出されてしまいました。後に引けなくなった林旲青は鞭を受け取り、紀雲禾の背中に鞭を振り下ろします。しかし次の瞬間、林旲青が持っていた鞭はもの凄い衝撃と共に散ってなくなりました。
その夜。谷主の林滄瀾は林旲青がやって来るのを見計らい、わざと仙侍の卿舒に林旲青の弱さを嘆くふりをします。
卿舒から林旲青を刺激する理由を尋ねられた林滄瀾は、林旲青が悟りを得なければ紀雲禾を制御できないとの胸中を明かしました。まんまと触発された林旲青は紀雲禾を呼び出し、共に林滄瀾を倒そうと持ち掛けます。
林旲青は林滄瀾が霊力を損なっていることに気づいており、自ら手を下して谷主になることを決意していました。とはいえ1番の強敵は卿舒であり、卿舒を倒すには紀雲禾との協力が必須でした。
紀雲禾は林旲青が谷主になったら長意と一緒に万花谷を出ることを条件に、林旲青の提案を受け入れます。林旲青は紀雲禾の条件を即決こそしなかったものの、検討するという形で紀雲禾への誠意を示しました。
早速、紀雲禾と林旲青は卿舒を倒すべく、かつて2人で編み出した鎖霊陣の修練を始めます。林滄瀾の家。林滄瀾は、卿舒から林旲青に真相を明かさないのかと問われます。
このままでは父子で殺し合うことになると警告する卿舒に、林滄瀾は例えどんなに憎まれようが林旲青の心を鍛えたいとの意思を明らかにします。
さらに、林滄瀾は長年に渡り紀雲禾に霊力を注いできたことから先が長くないことを感じ取っており、自身を林旲青の”最後の研磨石”として使うことを決意していました。林滄瀾は残された霊力を与えるため、紀雲禾を呼び出します。