【九州縹緲録~宿命を継ぐ者~】46話・47話・48話あらすじ。姫武神だと判明した羽然はひとり青州に残ることを決意し、阿蘇勒は白舟月を救うべく下唐国を目指しますが、姫野はもう少し羽然の傍にいたいと青州に残ることにしました。下唐国に戻った阿蘇勒は父の死と、それに伴う宿命を押し付けられます。そんな中、殤陽関での争いで死亡したと思われた雷碧城は北陸に姿を現します。
46話あらすじ
青州。羽然は新たな羽皇の博敏克が姫武神と思しき女子を皆殺しにしていることを知り、激しい罪悪感に苛まれていました。
博敏克は羽然の父である羽皇から姫武神に殺害されるとの予言を受けていたことから、その可能性が高い羽然と同じ日の生まれの女子を先に始末していたのです。とはいえ、まだ羽然が姫武神であるかさえ定かではないため、羽然と姫野は真相を確かめべく神殿へと向かいます。
早速、神殿にて舞を披露する羽然でしたが、石像化した鶴雪団が覚醒することはありませんでした。すると、そこへ博敏克と下唐国の国師の宮羽衣が現れます。
博敏克は羽皇の血を継ぐ羽然が姫武神ではないことに関心を高めており、羽然の父が遺した姫武神に殺害されるとの予言は外れたと嘲笑いました。宮羽衣に追い立てられて埠頭へとやって来た羽然と姫野は、後をつけてきた青州の兵の襲撃を受けます。
大勢の兵を相手に孤軍奮闘していた姫野も、駆けつけた天駆武士団の翼天瞻の助太刀のおかげで何とか難を逃れました。しかし翼天瞻は姫野を守る際に身を挺していたため、そこで命を落としてしまいます。
翼天瞻から羽然を託された姫野は東大陸に連れ帰りたいとの意思を示しますが、羽然のもう一度姫武神なのかを確かめたいとの気持ちを汲んで神殿へと向かいます。その一方、宮羽衣は黒装束に身を包んで仮面をつけた者たちと謎の儀式のようなことを行っていました。
黒装束の者たちは宮羽衣に装飾品のようなものを捧げた後、彼女を取り囲んで跪きました。時を同じくして、青州に到着した阿蘇勒は青州の荒れ果てた様子に驚きながらも、姫野たちの元へと急ぎます。
46話の感想
個人的な恨みから翼を持つ羽人を根絶やしにしようとしていた博敏克は殺害されましたが、その最期には少し切なささえ感じました。博敏克が宮羽衣を想う気持ちは本物だったからこそ、最期は宮羽衣の手を煩わせぬよう自らトドメを刺したのでしょう。
それにしても、まさか宮羽衣があんなにも権力に飢えていたとは思わず、とても驚きました。宮羽衣が行っていた謎の儀式のようなものに関する謎は判明していませんが、黒装束や仮面は辰月の存在を窺わせます。
青州では所々でカラスが現れていますし、羽族の知らない石化の術が使われていることなどからも、青州と辰月に関わりがある可能性は濃厚かもしれません。また、姫武神だったことが判明した羽然の今後も心配で、このままだと羽然は青州から出ることはできないような気がします。
47話あらすじ
青州。やはり姫武神だった羽然は、覚醒した鶴雪団から神殿に入り青州を災厄から守るよう求められます。
駆けつけたばかりで事情を知らない阿蘇勒は、姫野が目覚めたら3人で青州を出ようとの提案をしますが、羽然は既に心を決めていました。羽然は阿蘇勒が青陽君子として北大陸へ戻ることを使命とするように、自分は青州に残ることが使命なのだと話します。
そして、未だ目を覚まさない姫野に寄り添いながら姫野に出会えたことは最高の幸せであり、彼を想えば心が解放されると別れを告げます。その後、羽然は民衆に正式な姫武神だと紹介され、阿蘇勒に付き添われながら神殿へと入りました。
これにて羽然は姫武神として生きていかねばならないゆえ、以前の情愛や恩讐を忘れて富や名誉とは無縁で、子を産むことも許されない天涯孤独な存在となりました。羽然を見送った阿蘇勒の後ろには姫野の姿があり、阿蘇勒と姫野は今後のことについて話し合います。
阿蘇勒は白舟月を助けに天啓を目指し、姫野はもう少しだけ羽然と共にいると青州に残ることにします。
青陽、北都城。青陽は風雪に見舞われ、厳しい寒さに襲われていました。そんな最中、大君の呂嵩は巡回に行った際に落馬し、重傷を負ってしまいます。
元より土地の痩せた青陽では家畜でさえ冬には凍死するほどで、40歳まで生きられる遊牧民ですら稀な環境ですが、呂嵩は既に60歳を迎えていました。しかも今年はいつもに増して厳しい風雪に見舞われているゆえ、呂嵩がもう持たないことは明白でした。
そこで、第1王子である長男の比莫干が呂嵩の代理を務めると宣言したところ、叔父や九王らは猛反発して一触即発の空気が流れます。呂嵩の親友である沙翰が駆けつけたことでその場は収まりましたが、比莫干は強い野心を抱いていました。
比莫干は呂嵩の5兄弟の中で最も優秀ではあるものの、同じく優秀な三男の旭達罕に対して敵対心を持っていました。そのため比莫干は大君の跡継ぎの座を確実にすべく、叔父たちの首を持って呂嵩の元を訪れて先手を打ちます。
47話の感想
やはり羽然は姫武神となり青州に残ることを選びましたが、もう2度と阿蘇勒たち3人の姿が見れないと思うと切なくなりました。いくら姫武神という存在が青州を守るとしても、天涯孤独の宿命を背負わされるのはあまりに酷に感じますし、そもそも何故そのような存在が必要となったのか青州の歴史も気になるところ。
それにしても、青陽部でこんなにも重大な事件が発生していたとは驚きました。大君の呂嵩は落馬が要因となって亡くなりましたが、青陽の天候など把握しきっているであろう呂嵩が自ら巡回に行った点については疑問が残ります。
これには沙翰も首を傾げていましたし、同行していたのが野心家の長男の比莫干であるということも怪しさが増します。
48話あらすじ
下唐国、南淮城。青州から戻った阿蘇勒は国主の百里景洪に拝謁し、これまでの出来事について謝罪します。
南淮城までの道中にて断罪された囚人を無断で釈放したことに加え、青州で国師の宮羽衣を守れなかったことから全ての罪は自分が負うと申し出ました。宮羽衣を羽然が殺害したことには思わず声を荒らげる百里景洪だったもののこれは羽族の問題であり、阿蘇勒に非はないとして罪は問わない意向を示します。
また、白舟月も人質ではなく下唐国の賓客であり、阿蘇勒と再会させるべくとどめただけだったので楚衛国には帰すとのことでした。阿蘇勒は全てが丸く収まり百里景洪に感謝しますが、父で青陽大君の呂嵩が亡くなったことを知らされると、驚きを隠せませんでした。
しかも阿蘇勒の兄たちは文を通じて、下唐国との盟約は白紙に戻すことと、阿蘇勒の処置は百里景洪に任せるとの意向を示していたのです。そこで百里景洪は阿蘇勒こそが正統な跡継ぎであることを理由に、下唐国の10万の兵と共に地位を奪い返して草原の王になるよう提案します。
しかし、この提案を受けるということは青陽部が下唐国の属国になることを意味していました。野心を持たない阿蘇勒はこれを拒否し、10日後に処刑されることとなりました。
一方で、白舟月は百里景洪に呼び出され、ある提案を持ち掛けられます。それは、辰月に傾倒して人心を得られぬ長公主を討つがゆえ、白舟月に皇帝になれとのことでした。
ただし、その条件は百里景洪の息子に嫁ぐことだったため断る白舟月でしたが、青陽部に見捨てられた阿蘇勒の命を引き合いに出されて脅されます。また、殤陽関での争いで亡くなったとされる辰月の雷碧城は生きており、北陸の朔北にいました。雷碧城は朔北の狼主の元を訪ねると、青陽大君が亡くなったことを知らせ、今こそ青陽を平らげるときだと話します。
48話の感想
つくづく阿蘇勒は乱世を生きるのには向いていないタイプの人間だと感じました。確かに阿蘇勒は元より平和主義で頑固者ではありますが、乱世を生き抜くには時に野心も必要なので、もう少し柔軟な考えが求められるところ。
それも阿蘇勒の良さではあるとはいえ、百里景洪の提案を受け入れて下唐国の属国になったとしても、後に属国から逃れる方法はいくらでもあるはずです。そもそも武力でいえば、蒼雲古歯剣と青銅の血を併せ持つ阿蘇勒に敵う者など辰月くらいしかいないわけですし、頭脳戦なら聡明な白舟月の力を借りればいいでしょう。
青陽人としてのプライドもわかりますが、今や阿蘇勒を見捨てるような兄が治める青陽部のために、ここで阿蘇勒が命を落とす必要はないように思います。