日本のオリンピック初参加から、東京オリンピック開催までを描いた『いだてん-東京オリムピック噺-』10話では、金栗四三と三島弥彦がオリンピックに出場するために向かったストックホルムでの話が中心でした。初めて外国の地を踏みしめた彼らは、日本を背負うという巨大なプレッシャーとどう向き合ったのか……。それでは『いだてん』10話のネタバレ解説をご紹介します。
大河ドラマ『いだてん-東京オリムピック噺-』
10話「真夏の夜の夢」あらすじ
金栗四三と三島弥彦は、ストックホルムに到着するとすぶに、オリンピック会場を見学。その翌日に、金栗はガイドのダニエルとマラソンコースを視察します。
その後、日露戦争に勝利した日本の選手ということで、金栗と弥彦は現地の記者から取材を受けるなど注目されていました。
また、日本と同じくオリンピックに初参加するということで取材を受けていた、ポルトガルの選手・ラザロに金栗は敵対心をむき出しにします。
金栗と弥彦は、自分たちが注目されていることを知らせるため、嘉納治五郎に手紙をだしました。しかし、翌日の新聞記事には彼らの期待とは裏腹に”小さな日本人選手”との見出しが……。
確かに、西洋の選手たちは体格もよく背も高いと、金栗と弥彦は自分たちとの違いに悩み始めるのです。
ドラマ『いだてん-東京オリムピック噺-』10話の解説
日本の文化が喜ばれる?
ラザロは、金栗の履いていた足袋が気になったようで、足先が鹿のような蹄(ひづけ)担っていると勘違いしていました。
確かに、日本人からすると当たり前のものでも、諸外国の方から見ると不思議な履物と見えるようですね。
しかし、この足袋が意外にも外国選手と金栗を繋げるきっかけとなったのです。金栗は、ラザロに足袋をプレゼント。言葉が通じない金栗は、”足袋は職人が作ってくれたもの”と伝えたかったようですが、なぜか大工職人の履物だと伝わってしまったようで。
また、ラザロが大工職人であったこと、彼も貧しさから電車に乗れずに走っていたことなど、自分と同じ境遇であると知った金栗は、ラザロに足袋をプレゼントしたのです。
足袋を履いたラザロは、走りやすくて動きやすいと大喜び。これを機に、足袋が欲しいという選手が金栗の周りに集まりだし、金栗は足袋職人の黒坂(ピエール瀧)に追加で送ってほしいと手紙を書いたのです。
意外にも、このようなところで日本の文化である足袋が、世界に広まりつつあった瞬間でした。
絶望からの復活!
諸外国の選手から注目され、世界レコードを出した金栗四さんの注目度は高く、置いてけぼりをくらってしまった三島弥彦。新聞には、金栗の写真や記事ばかりで、絶望感に苛まれてしまいました。
西洋の選手たちとの体の違いもあり、自分は期待されていないと思い込むなど、大きなプレッシャーを感じていたのでしょう。
その結果。ストックホルム到着から10日で部屋から出て来なくなり、走る気力も失って酒に逃げ、窓から飛び降りようとしてしまいます。
しかし、金栗の言葉で弥彦の迷いがなくなりました。
自分たちがやろうとしていることは、日本人の1歩になる。自分たちの1歩に大きな意味があるのだと……。
もちろん勝つためにストックホルムに来たことは確かです。しかし、勝ち負けの前に、日本が初めてオリンピックに参加することに意味があると伝えたかったのでしょう。
その大切な1歩という大きな責任を背負っているのだと。
ここからの弥彦は、本来の弥彦の姿に戻り少しずつタイムを縮めていくことに尽力したのです。
スウェーデン語(すゑでん)で、ちょっと面白い言葉がありました。
・水をバッテン(vatten)という→熊本弁の”ばってん”と同じで金栗のテンションが上がる
・日本をヤーデンと呼んでいた
ドラマ『いだてん-東京オリムピック噺-』10話の感想
外国選手との差に、思いかげないプレッシャーに負けそうになってしまった弥彦。確かに、日本ではいい成績を残していましたが、やはり世界は遠かった……ということでしょうね。
特に、日本を背負うという大きなプレッシャーに耐えなければならないことは、大変な苦労があったのではないかと思います。
金栗四三は、自分自身もプレッシャーを感じていたから、弥彦の気持ちを分かっていたはず。ただ、彼の中では”日本を背負う”こと、そして”大切な1歩”を進めるための責任感と期待感に満ち溢れていたのでしょう。
また、田んぼを売ってまで資金を作ってくれた兄や、それに協力してくれたスヤ、資金繰りをしてくれた仲間など、すべての人への感謝が彼を揺り動かしているのかもしれません。
金栗が、幼少時代に体が弱かったことなど信じられないほど、強靭な精神力を持っていたのだと関心しました。
実際の話によると金栗は、日射病によりレース途中で倒れて近くの農家で介抱され、目を覚ました時にはすでに競技が終了した翌日だったとあります。
これにより、諦めるしかなかった金栗。悔しい思いを抱えたまま帰国することになったようですが、彼なりに日本人の体力不足や技の未熟さに気づいたとのこと。
ただ、彼が倒れたのは日射病以外にも要因があったようです。
・スケジュール調整や体調管理がやサポートがなかった
・20日間という海外渡航での体への負担
・馴染みのない白夜での睡眠不足(五輪開催時はほど白夜だった)
・食事面での栄養不足
・路面が舗装されていたこと(日本は土)
・レース当日に、金栗を迎えに来るはずの車が来ず、会場まで走っていったこと
・ラザロがレース途中で死亡するなど、過酷な状況でのレースで金栗は給水所に立ち寄らなかった
この事実を知った上で観ると、さらに当時の過酷な状況が浮き彫りになるかもしれませんね。
どこまで史実に忠実に再現されているのか分かりませんが、彼らが置かれていた立場はドラマ以上に厳しかったということでしょう。
まとめ
現代では、外国の方にも劣らない体格になってきた日本人ですが、当初はやはり小さかったのでしょうね。また、ドラマの中でも外国の方々の中にいる金栗四三(中村勘九郎)や三島弥彦(生田斗真)がとても小さく見えるし、体力の違いも相当なものだろうという印象を受けました。
そんな状況下での戦いでも、自らを奮い立たせ勝利を掴もうと尽力する姿は、それこそ大和魂を見せつけられたような気がします。
結果はどうであれ、彼らが新たな1歩を日本の歴史に刻んだことは間違いないので、今後の流れも楽しみです。