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アメリカン・マンハント:O・J・シンプソン(Netflix)アメリカの英雄が殺人犯に⁉︎

アメリカン・マンハント:O・J・シンプソン,解説,ネタバレ 実話・実在の人物を基にした
©︎Netflix
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ネタバレ解説

ロサンゼルス市警、LA郡地方検事局、弁護団が事件を再調査する

アメリカン・マンハント:O・J・シンプソン
「アメリカン・マンハント:O・J・シンプソン」©︎Netflix

本作は、フロイド・ラスによる「アメリカン・マンハント」シリーズの第2弾です。第1弾は、2013年にアメリカのマサチューセッツ州ボストンで発生した、ボストンマラソン爆弾テロ事件に関するものでした。第2弾では、1994年にアメリカのカルフォルニア州ロサンゼルスで起きた、O・J・シンプソン事件を取り上げます。

ロサンゼルス市警、地方検事局、弁護団らは、裁判には呼ばれなかった目撃者にインタビューしたり、警察が収集しなかった物的証拠を検証していきます。

裁判に呼ばれなかった目撃者と、警察が収集しなかった物的証拠は、以下の通りです。

  • 事件現場の周辺を白のブロンコで事故を起こしたO・J・シンプソンを目撃した女性
  • ロサンゼルス空港で何かを捨てるO・Jの姿を目撃した男性
  • 血のついた空の医療品
  • バスタブの横に置かれたナイフの箱
  • 電気のスイッチについた血痕
  • 洗ったばかりの洗濯物
  • 逃走に使ったブロンコから発見された銃
  • パスポート
  • 変装キット
  • 現金8000万ドル

これらの目撃者と証拠品を検察側が採用しなかった理由は、判決の項目で説明します。

1990年代の過激な黒人差別が人々をO・Jに惹きつけた

O・Jの逃走劇はテレビで生中継され、9500万人もの人が釘付けになりました。当時はNBAファイナルの中継がされていたものの、それを遮ってO・Jの様子が中継され、会場内のモニターにまでその様子が映し出されました。

これほどまでに人々がO・Jに熱狂的になったのには、1990年代のアメリカでの過激な黒人差別が関係しています。この頃のアメリカでは、”警官による暴力”が黒人の死亡理由の第4位に上がるほどで、人種間の対立が社会問題化していました。

当時のロサンゼルスでは警察による過激な黒人差別が横行しており、市民権団体によれば、ロサンゼルス市警は25年に及ぶ暴行と不正の歴史があったそう。黒人のロサンゼルス市民は、黒人というだけで理由もなく止められ、誰かが警察に虐待されたというストーリーを皆が持っていました。

1991年には、ロドニー・キングという黒人男性が、一方的に4人の白人警官から暴行されるという事件が起きています。無抵抗だったキングを一方的に警官4人で暴行して重症を負わせたにもかかわらず、彼らは無罪となり、この判決に抗議する黒人らによってロサンゼルス暴動が引き起こされました。

あからさまな人種差別に怒る黒人らは、キングの裁判が行われた裁判所や警察署を襲撃し、ロサンゼルス市街で商店への放火や略奪を行いました。長年に渡って虐げられてきた怒りも相まって黒人の怒りは頂点に達し、アメリカ史上に残る暴動へと発展していきます。

ついには黒人初のロサンゼルス市長を務めていたトム・ブラッドリーが非常事態宣言をし、州兵を派遣して市内全域に外出禁止を命じました。ところが、それでも暴動は収まらなかったため、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領が陸軍と海兵隊からなる4000人規模の部隊と、暴動鎮圧の特殊訓練を受けた担当官1000人を派遣しました。

こうした武力による鎮圧が進む一方、平和的対話の呼びかけも始まります。事の始まりであるロドニー・キングや、黒人活動家ジェシー・ジャクソンらが収束を呼びかけ、6日間にわたる大規模暴動は収束しました。

ロドニー・キング事件で無罪判決を受けた4人の警官は、市民的権利の侵害で起訴され、2人が有罪となりました。

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