マードック家殺害事件: 法曹一族の裏の顔(Netflix)シーズン2ネタバレ解説。本作は、アメリカ・サウスカロライナ州の名士として有名な法曹一族マードック家の妻マギーと次男ポール殺害事件に迫った、全3話構成のドキュメンタリードラマです。シーズン2では、マードック家の家長アレックの裁判に至るまでの過程を家政婦やいとこなどの証言を交え、詳しく解説していきます。
マードック家の家長アレックの裁判
2023年1月23日
マードック家の家長アレックの裁判が始まりました。
アレックは、妻マギーと次男ポールの殺害については無罪を主張しています。
アレックのアリバイ
2021年6月7日、事件当日。
朝仕事に行ったアレックは、ポールが家に来ることから普段より早く帰宅しました。翌日はアレックとポールで庭仕事をする予定で、ポールも間もなくマードック邸に到着します。
アレックとポールは2人で話しながら敷地内を車で走り、イノシシを探して少し射撃もしました。ポールは2発、アレックは1発撃ちました。
アレックが木で遊ぶ様子を、ポールは笑いながら携帯の動画に収めます。アレックとポールが1時間強ほど一緒に時間を過ごしていた頃、まだマギーは診察から帰宅していませんでした。
その後帰宅したマギーも加わりしばらく3人は家の中で過ごし、マギーとポールは2人で犬舎へと向かいます。犬舎には大抵は四輪バギーなどに乗って行ってたものの、徒歩で行く時もありました。
家に残ったアレックはテレビを観ているうちにうたた寝してしまい、目を覚ますと真っ先にマギーに電話をかけました。
9時6分、アレックは母の所に行くとのメッセージをマギーに送るもすぐに返信はなく、22km離れた母の家へと向かいます。アレックは母に会い、介護者のシェリーと少し話して30〜40分ほど過ごし、母の家を出ました。
その道中、アレックは数人に電話をかけ、連絡のついたジョンと長男バスターと話をします。帰宅して家に入ると誰もおらず、車に乗って犬舎へとやって来たアレックは倒れているマギーとポールを発見し、911に通報しました。
マギーとポール殺害事件の矛盾
マギーとポールの遺体に残された銃槍
マギーとポールの殺害には2丁の異なる銃が使われていたため、弁護側は単独犯ではなく、2人の撃ち手がいた可能性を考えました。そこで検事総長は法医学専門家ケネス・キンゼーを雇い、報告内容の検証を行わせます。
キンゼーが出した検証結果は、以下の通りです。
- 撃ち手は1人
- 犯人はポールから殺害(若くて腕力もあるポールが先に殺されなければ、抵抗したはず)
- 犯人は飼料小屋の真ん中に立つポールを散弾銃で撃ち、ドアに向かって歩いてきたところをもう1度撃った
- それが致命傷となったポールは上半身がドアの外に出た状態で倒れた
- マギーはポールとは異なるライフル銃で撃たれた
- マギーは飼料小屋に向かっていたところで犯人と遭遇し、左大腿部と腹部を撃たれて手と膝をついて倒れた
- その時に後ろから撃たれたのが胸から顎にかけて貫き致命傷となったが、犯人はマギーの頭の方へと移動してすでに生き絶えたマギーの頭をもう1度撃った
このポールとマギー殺害に使用された銃は、マードック家も所有している種類の銃でした。
アレックと食い違う介護者シェリーの証言
アレックの証言では、アレックが母の所に滞在した時間は30〜40分ほどとのことでしたが、母の介護者シェリーの証言は異なっていました。裁判所でシェリーはアレックが来た時に彼の母は寝ていたこと、アレックは妙に落ち着かない様子で滞在時間は20分ほどだったと証言します。
さらに、事件翌日にはアレックからシェリーに連絡があり、もしアレックの滞在時間を聞かれたら30〜40分と答えるようお願いされていたことも明かしました。
裁判中に新たな事件が発生
2021年9月4日、事件から3ヶ月後。
午前10時半頃、アレックの友人でいとこのエドワード・スミスはアレックに呼び出されました。すぐにエドワードは指定された待ち合わせ場所に向かい、間もなくしてアレックも到着します。
ところが、車に乗るアレックの様子は少しおかしく、運転席の日除けを窓にかかるくらい引いた状態で窓から顔を覗かせました。アレックのあまりの異常さにエドワードが事情を尋ねたところ、アレックは町の人に見られたくないことや、SLED(サウスカロライナ州法執行部)に監視されていると打ち明けます。
※SLEDはサウスカロライナ州の調査法執行機関で、知事と司法長官の指示に従い、州に代わって調査をする
さらに、アレックはマギーとポール殺害事件で一変した人生を嘆き、エドワードに自分のことを撃ち殺すよう依頼したのです。しかしエドワードがアレックの依頼を断固として拒否したため、アレックは自分でやると言って車に乗り込み、そのまま走り去ってしまいました。
慌ててエドワードはその後を追い、アレックに追いついたところで車を止めると、銃を持ったアレックがやって来て空中に向かって銃を発砲します。その直後、アレックは地面に倒れ、地面に突き出てた石に頭をぶつけて怪我を負いました。
アレックはエドワードに撃たれたと主張
そもそもこの事件でアレックが怪我を負ったのは自ら倒れた際に石に頭をぶつけたからであり、その間エドワードは車から降りてもいません。しかし救急車に乗せられたアレックは、車がパンクして修理をしていたところを通りすがりの人に撃たれたという事実とは異なる供述をしたうえ、最終的にはエドワードに撃たれたとの主張を始めました。
その結果、エドワードは計画的犯行と見なされ逮捕されてしまいます。しかも捜査の過程でエドワードは、過去8年〜10年に渡ってアレックの小切手の現金化をしていたことを問題視され、資金洗浄や金融不正に関与していた疑いまでもかけられてしまいました。
実際にエドワード自身もアレックの小切手の現金化については不信感を抱いており、過去にはアレックに手を引きたいと申し出たこともありましたが、その際エドワードはアレックの発言から自分の娘の身に何か起きるかもしれないと感じて辞めれませんでした。
アレックはエドワードの娘が通勤の際に治安の悪い地域を通らなければならないのを知ったうえで、「娘の勤務先は変わってないか?」とエドワードに確認した
このようにアレックは直接的な脅迫はせずに仄めかすだけですが、サウスカロライナ州で著名な名士の法曹一族マードック家を相手にしては断ることはおろか、相談できる相手すらいないのが現実なのです。
アレックのその後
マギーとポール殺害の罪で有罪
2023年3月2日。
アレックはマギーとポール殺害の罪で有罪判決を受け、いずれの罪でも連続して終身刑を下されました。
アレックがマギーとポールを殺害した物的証拠こそなかったものの、ポールの携帯に残された動画が決定打となりました。それは、事件当日の午後8時44分にポールが犬舎にて撮影した動画で、ポールが預かっていた友人の犬の様子を映した動画にアレックの声が入っていたのです。
これによりアレックはマギーとポールの死亡時刻8時44分から49分の間に近くに居たことが証明され、事件発生時には母の家に居たというアリバイも崩れ、陪審員らは満場一致でアレックを有罪としました。
しかし、アレックはこの判決を不服として現在控訴しています。
金融詐欺容疑で司法取引
2023年9月18日。
アレックは金融詐欺容疑を認め、連邦検察官と司法取引を結びました。アレックが罪を認めたのは、初めてのことでした。
アレックの余罪
アレックはまだ100件以上の州の容疑で裁判を待っている状態で、連邦犯罪に対して最低760万ドルの賠償金、罰金、弁護士費用を負うと予想されています。
また、アレックの友人でいとこのエドワード・スミスは、銃による威嚇行為、計略、自殺幇助、高度かつ悪質な脅迫・暴行、不正請求、資金洗浄の罪で起訴されました。
エドワードはアレックの指示で437枚の小切手、合計約240万ドルを現金化したとされています。