【ラチェッド】(2020)は、映画史の歴史に残る不朽の名作【カッコーの巣の上で】(1976)に登場する、看護師長ラチェッドの過去を描いたスピンオフドラマです。あの冷徹な看護師長はどのようにして生まれたのか、これまで語られてこなかったラチェッドの衝撃の過去が明らかとなります。HuluやAppleなど各種配信サービスが獲得に躍起になったという大注目作品、とくとご覧あれ!
【ラチェッド】あらすじ
1947年、アメリカのある町で神父4人が殺害される事件が起きます。犯人である青年の名は、エドモンド・トールソン(フィン・ウィットロック)。
母親が神父の1人に乱暴されて亡くなった怨恨から犯行に至りました。エドモンドは死刑が確定したものの、精神鑑定が必要なためカルフォルニア州立ルシア精神病院へと移送されることになります。
時を同じくして、ルシア精神病院を目指す人物がもう1人いました。まるで女優のように豪華絢爛なファッションを身に纏ったミルドレッド・ラチェッド(サラ・ポールソン)。
米軍看護師として働いていたラチェッドは、ルシア精神病院で働くべく面接へとやって来ていました。しかし、ラチェッドは面接のアポを取っていないどころか、病院が求人すらしていなかったため追い返されてしまいます。
ところが、後日ラチェッドはルシア精神病院の院長リチャード・ハノーバー(ジョン・ジョン・ブリオネス)直々に看護師として採用されます。実は、ラチェッドは追い返される前に院長のハノーバーと話す機会を得ており、彼に話す隙を与えないほど怒涛の勢いで自らをプレゼンしていました。
そのうえでルシア精神病院で働く1人の看護師の弱みを握って退職へと追い込み、看護師の空きを作っていたのです。強引な手を使ってまでルシア精神病院での職を得たラチェッドの次の目的は、ルシア精神病院で主任看護師になること。
ラチェッドは、目的のためなら手段を選びませんでした。患者らの服用薬に血圧降下剤を混入し、持病を持っている患者の発作を意図的に起こして自ら迅速な対応をして、優秀な看護師であることを証明します。
その日はカルフォルニア州知事のウィルバーン(ヴィンセント・ドノフリオ)が視察に来ていたため、ラチェッドは見事にウィルバーン州知事の信頼までも勝ち取りました。その後、ラチェッドは血圧降下剤を混入させたことを院長ハノーバーに見抜かれますが、今度は自分が自殺を唆した患者の死を利用してハノーバーを追い詰めます。
「患者の死が公になれば監督不行き届きになる」と、身を案じた院長ハノーバーはラチェッドの指示通り遺体処理を手伝うしかありませんでした。こうしてラチェッドは院長さえも手玉に取り、自らの目的のためどんな暴挙も可能にしていくのです。
なぜ彼女がここまでルシア精神病院に執着するのか、実はラチェッドには真の目的がありました。
【ラチェッド】キャスト情報
ミルドレッド・ラチェッド役/サラ・ポールソン
ミルドレッド・ラチェッド
サラ・ポールソン
米軍看護師として働いていたものの、とある目的のためカルフォルニア州立ルシア精神病院に看護師としてやって来ました。求人もアポもなかったにもかかわらず強引に看護師として雇わせるなど、目的のためなら手段は問いません。
どんなに残酷な治療にも顔色ひとつ変えることなく常に冷静な性格で、人を操るのを非常に得意としています。
リチャード・ハノーバー役/ジョン・ジョン・ブリオネス
リチャード・ハノーバー
ジョン・ジョン・ブリオネス
ルシア精神病院の院長。
野心家であり、ロボトミー手術や催眠療法など常に新しい治療法を取り入れています。紳士的でありながらも、マッドサイエンティストという二面性がある人物でもあります。
ベッツィー・バケット役/ジュディ・デイヴィス
ベッツィー・バケット
ジュディ・デイヴィス
ルシア精神病院の主任看護師。
院長のハノーバーに好意を寄せており、彼の右腕として献身的に働いています。新しく入ってきた看護師のラチェッドのやり方や言動が気に食わず、強い敵対心を抱いています。
グウェンドリン・ブリッジス役/シンシア・ニクソン
グウェンドリン・ブリッジス
シンシア・ニクソン
ウィルバーン州知事の側近。
有能な知事の側近として働いているものの、我の強いウィルバーン州知事と意見が衝突することもしばしばあります。ルシア精神病院に新しく入ったラチェッドのことが気になっています。
エドモンド・トールソン役/フィン・ウィットロック
エドモンド・トールソン
フィン・ウィットロック
神父4人を殺害した罪で、ルシア精神病院に送られてきた青年。
精神鑑定の結果によって死刑が決まります。看護師のラチェッドとは特別な関係にあるよう。
ハック・フィニガン役/チャーリー・カーヴァー
ハック・フィニガン
チャーリー・カーヴァー
ルシア精神病院の看護師。
先の戦争によって顔の半分を負傷し、火傷でただれた跡のようになっています。看護師として人々を救いたいという正義感が強く、院長ハノーバーの過激なやり方に反対することも。
レノアー・オスグッド役/シャロン・ストーン
レノアー・オスグッド
シャロン・ストーン
大富豪の未亡人。
いつも肩に乗せて出歩くほど、ペットの猿のことを溺愛しています。手足のない息子をひとりで介抱しており、ルシア精神病院の院長であるハノーバーに強い恨みを抱いています。
ルイーズ役/アマンダ・プラマー
ルイーズ
アマンダ・プラマー
ルシア精神病院の看護師ラチェッドが滞在するモーテルのオーナー。
モーテルの宿泊客のプライベートなことに興味があり、探偵並みの偵察力を持っています。製氷機の無駄遣いに厳しかったり、薬代がもったいないとヒルに血を吸わせたりと、とてもケチくさい一面も。
【ラチェッド】その他の登場人物
【ラチェッド】は名作ホラー映画のいいとこ取り
【ラチェッド】(2020)は、アメリカンニューシネマの代表作の1つである【カッコーの巣の上で】(1976)のスピンオフドラマです。
【カッコーの巣の上で】(1976)にて、主人公たちを苦しめた精神科病院の看護師長のラチェッドはなぜ冷酷なモンスターになってしまったのか、これまで明かされなかったラチェッドの過去が描かれています。
【ラチェッド】(2020)の最大の魅力と言えば、ショーランナーで制作総指揮を務めるライアン・マーフィーの手掛けたこだわりの演出。
ライアン・マーフィーは【アメリカン・ホラー・ストーリー】(2011)も手掛けており、本作でも豪華な映像や美術は【アメリカン・ホラー・ストーリー】(2011)を彷彿とさせます。
他にも、時折見られる照明が緑一色になる演出はラチェッドが【オズの魔法使い】(1939)の西の悪い魔女のようですし、ルシア精神病院のアールデコな内装は【シャイニング】(1980)のオーバールックホテルのよう。
神父4人を殺害してルシア精神病院に送られてきたエドモンド・トールソンは、【羊たちの沈黙】(1991)のハンニバル・レクター博士のようでもあり、ラチェッドが滞在するモーテルの雰囲気はまるで【サイコ】(1960)を思い起こさせます。
さらに、作中で流れている音楽までもが【サイコ】(1960)のようだったりと、まさに歴代の名作ホラー映画のオンパレードで、どこか懐かしくも全く新しい世界を見せてくれる作品となっています。
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