史上最悪のパートナー(Netflix)解説。「史上最悪のルームメイト」を手掛けたブラムハウス・プロダクションズが手掛けるスピンオフシリーズで、実際に起きたパートナーによる4つの事件に迫ります。幸せだったパートナーとの生活が、DVや親権争いによって最悪な結果を生みました。本記事では、事件内容と事件の背景について詳しく解説していきます。
第1話の解説
事件発生
2023年1月23日、オレゴン州グランツパス。バーテンダーのジャスティンは、恋人ベンジャミン・フォスター(通称:ベン)に監禁され、ひどい暴行を受けていました。顔面を何度も殴られ、縄で首を締められて重体でしたが、親友アンジーのおかげで九死に一生を得ます。ところが、ベンはそのまま姿をくらましました。そして、ベンが恋人を暴力をふるったのはこれが初めてではないことが判明します。
ベンは過去に交際していた2人の恋人に対しても、ジャスティン同様のDV事件を起こしていました。2012年に交際していた当時の恋人とは3度もDV事件を起こし、1度目は逮捕に至っています。しかしベンの罪は軽く、カウンセリング受診と地域奉仕を命じられただけで、たった数ヶ月で釈放されました。2度目は自作自演で彼女に顔を切られたように装って逆に彼女が逮捕され、3度目は州に起訴されて収監されました。
2017年に交際していた恋人には1年以上も暴力を振るい続け、最初的に彼女が病院に逃げ込んだことで事件が発覚します。この時はSWAT(特殊部隊)が出動し、ベンは逮捕されました。ベンは第1級拐取などで起訴されますが、被害者の恋人が恐怖心から公判で法廷に立つことを拒みます。そのため司法取引となり、ベンは比較的罪の軽い有罪を認めました。
こうしてベンは2年半の服役を言い渡されますが、裁判を待つ間に刑務所で過ごした729日を服役済みとされ、わずか24ヶ月で釈放されます。その後は、グランツパスにある恋人ジャスティンの家で冒頭の事件を起こし、逃亡から7日後にジャスティンの家に戻り自ら命を断ちました。
世界で増え続けるDV事件
こうしたDV(家庭内暴力)事件は後を絶たず、コロナ禍を機にアメリカだけでなく世界中で深刻なDV事件が多発しています。外出制限が続いたことでDV事件による通報が急増したのです。フランスではロックダウン開始の1週目に国内のDV事件が30%以上も増加し、中国でもコロナ騒動が落ち着いてから離婚が増えています。
どの国でも多くのDVやいざこざは子供の前で起こることが多く、アメリカで”DVに晒されている子供は毎年500万人”にも上るとのこと。DVの被害者となった子供は、自〇や家出、薬やアルコール依存などに陥ったり、性が絡んだ暴行を犯しやすくなるという統計結果が出ています。つまり、DVを受けた子供が犯罪に手を出すという負のループが起きてしまっているのです。
事実、アメリカでは年間200万人もの被害女性が出ていおり亡くなる女性が1日に11人もいます。これは、単純計算で日本の29倍であり、児童〇待も日本の10倍ほどに上ります。こうした背景には家庭環境だけでなく、DVに関する法律の緩さも関係しているのでしょう。
作中でも、ベンの元恋人は逃げ込んだ病院内で、例えベンが逮捕されても長くは収監されないと涙ながらに訴えており、いかにアメリカのDVに関する法律が緩いかが見て取れます。1人目の被害者は司法の不備を指摘しましたが、確かにベンが起こした数々の事件は、彼女の訴えを警察が重視していれば防げたように感じます。
警察が1人目の訴えさえ重視していれば2人目の被害者は出なかったかもしれませんし、2人目の被害者が申請したベンからの保護命令をもっと真摯に向き合っていれば、3人目の被害者は出なかったかもしれません。この一連の事件に関して、ラスベガス都市圏警察とクラーク郡地検は取材を断っています。
また、「ベンは病んでいた」との元恋人による証言がありましたが、実際にDV加害者は精神的な問題を抱えていることがほとんどです。加害者もDVを受けていて愛に飢えていたり、逆に過保護な家庭で好き放題に育ったなどのパターンがあります。いずれにせよ、こうした環境で育った者はそもそもの認知行動が誤っている場合が多く、暴力という間違った手段に出てしまうのです。そのため、加害者も適切な治療やプログラムを受ける必要があります。