【スパニッシュ・プリンセス】のネタバレ解説
物語に登場する女性たちの解説
キャサリン・オブ・アラゴン
ブルゴーニュ公妃がウォーベックの件で起こした王位継承権での混乱を抑えるため、幼少時代にアーサー王太子と婚約し、1501年11月にアーサー15歳キャサリンが14歳で結婚した。
作中ではアーサーが流行病により急逝した後、キャサリンの持参金が支払われていない、ヘンリー8世との結婚を望んだ手紙をキャサリン自身がスペインに送ったとあるが、史実ではスペイン側が持参金の返還の返還と寡婦財産を求める一方で、ヘンリー8世との結婚を進めるよう告げられたとある。
当時、若くして未亡人になった場合、持参金と共に帰国するのが当たり前だったが、イングランドが財政難であったことから持参金の返金を惜しんだヘンリー7世が、ヘンリー8世との結婚を考えた。
なお、キャサリンとアーサーの間に結婚の完成があったかどうかは、作中では結婚の完成があったにもかかわらずキャサリンが「なかった」と嘘をつくようリナやマギーに指示していた。
史実では、新床を祝福した神父が「あった」と言ったが、女官が「ない」と答え、イザベル女王は女官を信用し、ヘンリー7世も残りの示談金が支払われた時点でキャサリンとヘンリー8世の結婚を認める。
キャサリンとアーサーの間に肉体的な関係が無ければ結婚は完成していないため、キャサリンは清い体で嫁ぐことが出来るというもの。(結婚のリセットのようなもの)
1度でも2人が関係していた時点でキャサリンは「汚れている」ため、ヘンリーとは結婚できない。
作中では2人に関係があるよう描かれているが、実際には「あったかどうかは分からない」のである。
また、キャサリンとの結婚はヘンリー8世自身が熱望していた。
これは作中、史実共に同じでヘンリー7世の崩御後、枢密院の議論も待たずなおかつ喪が明ける前、2人は極秘に結婚式を挙げ、キャサリンは事実上イングランド王妃となり戴冠式も執り行われた。
マギー・ポール
クラレンス公ジョージとイザベル・ネヴィルの娘で、ヘンリー7世の妻エリザベス・オブ・ヨークの従姉。
叔父グロスター公リチャード(リチャード3世)がボズワースの戦いで敗れた後、唯一ヨーク家の王位継承権を持つ弟エドワード(テディ)がロンドン塔に幽閉された。
マギーは、王位継承権の放棄を約束し何度も解放を求めるも、テディは解放されることなく処刑されてしまう。
【ホワイト・プリンセス】では、エリザベス王妃がヨーク家の存在を危惧しテディの処刑を認めている。
この件で、マギーはエリザベスを恨んでおり一線を置いていた。
キャサリン妃とヘンリー8世の間に王女メアリーが誕生し、マギーは名付け親と養育係を命ぜられた。
しかし、キャサリンが男児を産むことに執着し過ぎて良心を見失い始めたのをきっかけに、「アーサーとの結婚は完成していた」とヘンリー8世に報告。
*この描写に関しては、史実では見られない。
マギーはカトリックの教えに準ずる考え方が多いが、それでも「何事にも囚われない真っ当な考え方」の持ち主。
作中では、争い事で誰も死なない平和な世界で静かに暮らすことを望んでいた女性として描かれている。
マーガレット・ボーフォート
ヘンリー7世の母で、王や王妃を差し置き事実上すべての実権を握っていた。
誰にも口答えはさせない、王に命じられても自分が違うと思えが実行せず、自分のやり方で対処する。
何事も決めるのは全て彼女で、テューダー朝を脅かす者はもちろん、その可能性がある「予測」だけでも排除させた。
自分の罪を隠すため、他の誰かに罪を擦り付けて「反逆者」に仕立て上げ処刑させた残虐な一面がある。
史実でもあるが、彼女は敬虔なカトリック教徒。
ただ、作中では「神の決めたこと」を理由に、人を生かすも殺すもすべて自分の思い通りに進ませている。
最期に結婚相手としてトマス・スタンリー卿を選んだのも、彼が「勝つ方につく戦略家」であることだった。
彼を夫に選んだのも、作中からヘンリーを王位に就かせると共に、王母という地位・権力への執着心であることが見て取れる。
メグ(マーガレット)・テューダー
ヘンリー7世の治世で、イングランドとスコットランド同盟のため、スコットランド王ジェームズ4世に嫁いだ。
イングランド王は年上で、メグが嫁いだ時にはすでに数人の子がいた。
メグと王の間には4男2女が生まれたが、成人したのは三男のジェームズ(後のジェームズ5世)だけで他は早世している。
夫ジェームズが同盟を結んでいたイングランドに反旗を翻し、ヘンリー8世がフランスに遠征に言っているのを見計らって奇襲を掛けようとした。
結果、夫ジェームズは戦死しスコットランドはまとまりが無くなると「女では治世できない」と反発を受ける。
その後、アンガス伯と秘密に結婚するも、「どうしようもない男」と知り婚姻無効を申し立てようとした。
しかし、これが敬虔なカトリック教徒であるキャサリンの怒りを買う。
臣下とアンガス伯の裏切りにより息子ジェームズを奪われ、一度はイングランドに帰国するもヘンリー8世やキャサリンからの協力は得られず、意を決してスコットランドに戻った。
そして、ヘンリー8世とキャサリンへの復讐心から人格が代わり、息子ジェームズ5世が成人するまで摂取となり実権を握る。
頼っていたキャサリンにも弟ヘンリー8世にも助けを受けらなかったメグは、穏やかで頼りない女性から、まるで鬼のような女性へと変わってしまった。
作中でメグは、このような女性として描かれている。
メアリー・テューダー
フランスとイングランドの同盟のため、フランス王ルイ12世の王妃となる。
メアリーは、老王のルイ12世に嫁ぐことを嫌がっていたが、2度目の結婚は自由に選んでいいという条件でフランスに嫁いだ。
ルイ12世が老王ということもあり、結婚から1年足らずでメアリーは未亡人となる。
メアリーが次の結婚相手として選んだのは、ヘンリー8世の友人で臣下の 初代サフォーク公チャールズ・ブランドンだ。
史実では、次期フランス王のフランソワ1世がヘンリー8世と年齢も近いということもあり、そのライバル心からメアリーとブランドンを結婚させたと記されている。
また、ヘンリー8世はメアリーとの約束など守るつもりはなく、ルイ12世崩御の知らせを聞くや否や、次なるメアリーの結婚相手を探し始めていた。
メアリーとブランドンが結婚したと聞かされたヘンリー8世は激怒し、イングランドへの帰国を禁じた。
最終的に、ブランドンは多額の金を支払う形でイングランドへの帰国を許された。